散歩はなぜ大事?雨の日も行くの? ドッグトレーナーに聞く愛犬が喜ぶ散歩・準備編
愛犬家ならばライフワークとして欠かせない毎日の散歩ですが、あなたの知識は十分ですか? 愛犬と飼い主、両方にとっての幸せな時間のために、散歩に必要な知識や準備をドッグトレーナーの浅野里実さんに伺いました。
散歩は犬にとってのライフワーク 散歩が嫌いな子は…
――犬にとってお散歩はどんな意味があるのでしょう?
犬たちにとって、散歩は一日の中で唯一、外の社会に触れられる時間です。私たちは仕事や学校、友人に会う予定など、何かしら理由があり外に出て行く機会がありますが、犬は飼い主が散歩に連れて行かない限り、身体的運動や精神的刺激を外部から得ることができません。基本的には毎日欠かさないようにします。
――散歩が嫌いな犬も毎日したほうがいいのですか?
身体的にも精神的にも健康であれば、毎日散歩に連れて行くことが望ましいです。
しかし“散歩が嫌いな犬”を無理に連れ出すことはおすすめしません。それよりもなぜ散歩が嫌いなのかを検証して、理由を取り去れるようにしてください。
外に出る時に着用する犬具が嫌な場合もありますし、車やバイクなどの乗り物の音が怖い、他人や他の犬が怖いなど……。犬によって感じ方が違います。どうしても外に出られない場合は、無理強いはせず、家の中での生活を充実させて生きて行くことも選択肢のひとつです。
――ときどき座り込んで動かなくなってしまう子もいますよね。
散歩コースの中で苦手なポイントがあったり、これ以上歩きたくないと思うなど、座り込む行動には何かしらの原因があるはずです。
リードを強く引いてこちらの言うことを聞かせようとせずに、道を変えたり、ときには抱っこをして移動するなど、犬にとってプレッシャーにならない方法を考えましょう。
――人間のルールに強引に当てはめず、犬とコミュニケーションするのが重要なのですね。ちなみに雨の日も散歩はマストですか?
行くのが理想ですね。雨天の散歩を嫌がる子は、雨でぬれるのが嫌なのか、雨具を身につけるのが苦手なのか観察してみてください。雨具をつけないといつも通りに散歩出来る子もいるので、雨天時の散歩前のアクションや、ぬれた後のケアを見直してみてください。
また、被毛がぬれた場合にはきちんと水分をふき取り、ドライヤーでしっかりと乾かしましょう。自然乾燥は被毛のもつれや毛玉の原因になったり、皮膚に炎症が起こる原因になります。
――そこでも飼い主が愛犬をよく観察する必要がありますね。
雨天でも散歩に行くことのメリットもあります。それは、台風や地震などの災害が起きた時に順応しやすくなることです。
さまざまな環境になれておくことは、精神面や健康面のキャパシティーを広げ、生存の確率を上げることにつながります。災害が起きてから環境変化に対して強いストレスを受けさせるよりも、日常からさまざまな時間帯や天候、気温などにならしておきましょう。

楽しい散歩、絶対にやってはいけないNG散歩
――散歩のときのマストアイテムを教えてください。
飼い主さんに持っていただきたいのはリードとハーネスor首輪、広い場所で運動するためのロングリードや伸縮リード、排泄(はいせつ)の処理や犬に飲ませるための水の入ったボトル、排泄物を持ち帰るための消臭マナーポーチなど。また、ボールやフリスビーなど一緒に遊べるおもちゃやトリーツもあるといいですね。

――1日にどれくらいの時間、散歩をするのがいいですか?
年齢や体の大きさ、犬種により個体差がありますから、毎日の習慣と観察を重ねてベストな時間を探るのがいいですね。
どんな犬にせよ、程よい時間、質の良い散歩がオススメです。
目的地まで移動する時間、匂いを嗅ぐ時間、遊んだり運動やトレーニングをする時間、排泄する時間、目的地から帰って来る時間……。愛犬がどのくらいの時間なら満足して、家に帰ってからリラックスできるのかが、ちょうどいい散歩の時間の取り方です。
何分がいいかは犬によって異なりますが、たとえば小型犬なら朝晩2回、朝出勤前に15分~30分、比較的時間が確保しやすい帰宅後は30分から1時間というところでしょうか。暑さが厳しい真夏や極寒の真冬は短めにするなど、季節によっても少し変わってくるかもしれませんね。
――初夏~夏の時期に気をつけたほうがいい点はありますか?
炎天下の散歩や、気温24度以上での車中への放置は絶対にNGです。人間よりも体高が低い犬たちは地面からの熱を感じやすく、熱中症リスクも高まります。
太陽が照り付けているアスファルトの温度は高温になり、犬の肉球がやけどしてしまう恐れがあります。散歩に出る前には必ず、飼い主が裸足になって30秒間アスファルトの上に立って、熱くないことを確認してください。熱くて立っていられなければ、犬も同様に熱いと感じます。
――愛犬が喜ぶ散歩のコツってありますか?
単調に歩くだけでなく、犬本来の暮らしを想像して、元々持っている能力が発揮できる機会を散歩の中に取り込んでみてください。
まず、電柱や草むらの匂いを嗅ぐことは、他の犬の存在を感じたり、何かの情報を得て楽しめます。私たちがSNSをしているようなものです。
ほかにリラックスしてゆったりと歩くところや、運動の為に走るところ、家の中とは違った環境でトレーニングをする時間、ボールなどでコミュニケーションを取りながら一緒に遊ぶ時間など。刺激的で充実した散歩で愛犬を喜ばせてください。そうすることで、愛犬は家の中でいっそうリラックスして過ごすことができます。

――ルートは犬の気分で決めさせてもいいのでしょうか。
ルートはどちらが決めてもいいのですが、犬の行きたい方向について行くばかりでも、反対に飼い主の一方的な判断ばかりになっても、心地よい状態とは言えません。
飼い主さんにしてもらいたいのは、犬が人間社会で暮らしやすいようにサポートしてあげること。例えば、都会や住宅地では交通量が少ない場所を選んだり、苦手な犬がいる場所を避けたり、運動できる公園へ連れて行ってあげるなどです。
それで公園に入った時には、好きな場所の匂いを嗅いでゆったり散策させてあげるのは良いことだと思います。
――そのほかに準備しておくべきことはありますか?
混合ワクチンや狂犬病予防注射、ノミ・ダニ予防、フィラリア予防です。外部からの感染症を予防し、伝染病を伝播(でんぱ)させないために、これは犬の飼い主の義務です。

- 浅野里実(あさの・さとみ)
- 千葉県習志野市のドッグスクール「Perrito」主宰。犬との暮らし方コンサルタント、ドッグトレーニングインストラクター。
スクールでは動物福祉を優先し、オーナーの知識の向上による動物のQOL向上をサポート。応用行動分析学・心理学に基づいた科学的根拠のある効果的な方法でトレーニングし「正の強化」をベースにしている。イングリッシュコッカースパニエルのコーダと、保護猫のフィーユと暮らす。
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