絶滅危惧アマミノクロウサギ、回復の兆し マングース駆除奏功
「絶滅危惧種」で生息数が数千匹と推定されているアマミノクロウサギについて、環境省が2015年度時点で、奄美大島(鹿児島県)だけで約1万5千~3万9千匹にまで回復しているとの推定結果をまとめたことがわかった。捕食者のマングースの駆除などが奏功したとみられる。同省は23年度までに、今より絶滅の危険度が低いランクに見直すことをめざしている。
環境省が朝日新聞の情報公開請求に応じて開示した資料によると、奄美大島内で発見したふんの量などから推定する従来と同じ方法で算出したところ、15年度時点の推定生息数は1万5221~1万9202匹だった。奄美大島でのふんの調査は06年度から行われており、15年度分は計24ルートで実施された。さらに、島内の森林内に最大564台設置したカメラの9年分の撮影データなどを加味して推定したところ、1万6580~3万9780匹と算出された。
環境省はこれまで、アマミノクロウサギの奄美大島での推定生息数について、03年度時点で2千~4800匹としてきた。
環境省那覇自然環境事務所は「推定方法は適切だと考えているが、まだ数字にばらつきが大きく、専門家からは『過大評価している可能性がある』などの指摘があった。ただ、アマミノクロウサギが増加傾向にあるのは間違いなく、二つの手法ではいずれも下限値が1万~2万匹と出ており、より精査が必要だが、この数字は現場感覚からも現実的だ」(岩浅有記・野生生物課長)としている。
アマミノクロウサギは、「近い将来における野生での絶滅の危険性が高い」とされる「絶滅危惧ⅠB類」に分類されているが、環境省は23年度までに一段階低い「絶滅危惧Ⅱ類」以下に見直すことをめざしている。奄美大島を含む「奄美・沖縄」は現在、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界自然遺産への登録をめざしており、希少種のアマミノクロウサギの生息数が回復していたとすれば、プラス材料になりそうだ。
(太田匡彦)
◆キーワード
<アマミノクロウサギ> 鹿児島県の奄美大島と徳之島だけに生息する固有種。体長は40~50センチ程度で、ウサギ科の中でも原始の姿をとどめている種と考えられている。04年度から国が保護増殖事業を行ってきた。
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