耳に障害がある
耳は、耳介、外耳、中耳、内耳に分かれます。障害されている部位によって、様々な症状が現れます。
なかでも外耳炎は、イヌにもっとも多くみられる病気で、放置すると内耳、中耳まで病変が進むので、早めに治療を受ける必要があります。
とくに垂れ耳の犬種では、耳の内部の環境が維持されにくいために外耳炎になりやすい傾向があります。なかでもアメリカン・コッカー・スパニエルは重症になりやすく、早期の治療が重要です。
耳は皮膚の一部です。アレルギー性皮膚炎を起こしやすい犬種に注意してください。
ネコでは、耳ヒゼンダニによる外耳炎がもっとも多い耳の病気です。
- 原因
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●耳介の異常
目に見える耳の部位を耳介といいます。見える部位なので異常を発見しやすいのですが、耳の内部に異常(外耳炎など)を合併していることもあります。
耳介では、外傷、耳血腫 (耳介の中に血がたまる病気)がもっとも一般的にみられる病気です。
ほかの病気にかかると、耳介に障害をきたすことがあります。たとえば、免疫介在性疾患(落葉状天疱瘡 、全身性エリテマトーデス)やアレルギー性皮膚炎などの皮膚病にかかると、耳介に障害を認めます。
耳介にできる代表的な腫瘍 には、扁平上皮癌 があります。
●外耳の異常
耳の穴から鼓膜までを外耳といいます。耳を気にする(耳をこすりつけるなど)、かゆがる、におう、耳を触れるといやがる、痛がる、頭を振るといった動作がみられます。また、症状が悪化すると頭を傾ける斜頸 といった症状が現れます。
外耳炎の原因には、細菌性や真菌、寄生虫(耳ヒゼンダニ)がもっともよくみられます。さらに草の実などの異物が原因となったり、アレルギー性皮膚炎の症状としてみられることもあります。
また、出血をみるときや治療に反応しないときは、外耳の腫瘍を疑います。
●中耳・内耳の異常
鼓膜から奥を中耳・内耳といいます。頭を振ったり、悪いほうの耳を痛がったりします。中耳の病気では、顔面神経麻痺 やホルネル症候群(片方の目が落ち込む、まぶたが下がる、瞬膜 が突出するといった症状の総称)がみられます。内耳の病気では、斜頸や目が規則的に揺れる眼振 、転倒、回転・旋回運動といった症状がみられます。
中耳炎・内耳炎は外耳炎が進行したものがほとんどです。まれに口腔 からの感染もあります。
●聴覚の異常
聴覚の異常とは耳の機能異常のことで、呼んでも来ないなどの難聴の症状がみられます。
後天性であれば内耳炎が考えられます。また、ダルメシアンや青目の白ネコでは、先天性の難聴を起こしやすい傾向があります。さらに、水頭症 などの神経系の病気が関連することもあります。
- 観察のポイント
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症状の程度や頻度、ほかの部位に異常があるかどうかを注意深く観察してください。
●耳がにおう
耳がにおう場合には、ほかに症状がみられなくても、細菌や真菌が耳の中で繁殖している危険性があります。
●耳あか(耳垢 )の色
耳あかの色が黒いと寄生虫や真菌が原因として疑われます。黄色であれば細菌を疑います。
●かゆみの程度
かゆみの程度を観察してください。異常なかゆみには、寄生虫が関係していることが多々あります。
●耳の中の出血
出血がみられるようなときは、耳に腫瘍ができているかもしれません。
●聞こえているかどうか
耳が聞こえているかどうか観察してください。耳が聞こえていなければ、内耳の病気や神経系の病気が考えられます。
●ほかの動物との接触
寄生虫が原因の外耳炎は、外出してほかのイヌやネコと触れ合う機会があったはずです。
●季節による症状の差
外耳炎は、梅雨の時期や夏季に比較的多くみられます。
●耳以外の症状がある
耳の症状と皮膚の異常がみられる場合は、皮膚病にかかっていることがあります。
顔(とくに目)に異常がある場合(顔面神経麻痺、ホルネル症候群、斜頸、眼振)は、中耳や内耳の障害が疑われます。
- 考えられる主な病気
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■耳介の異常
耳の亀裂[イヌ、ネコ]
耳血腫[主にイヌ]
皮膚病[イヌ、ネコ]
耳介全体の紅斑(アトピーと食物アレルギー)[イヌ、ネコ]
腫瘍[イヌ、ネコ]
■外耳の異常
異物[イヌ、ネコ]
アレルギー性外耳炎[イヌ、ネコ]
耳疥癬[イヌ、ネコ]
難治性マラセチア感染[イヌ、ネコ]
耳垢性外耳炎(脂漏性外耳炎)[イヌ、ネコ]
腫瘍[イヌ、ネコ]
■中耳・内耳の異常
中耳炎[イヌ、ネコ]
内耳炎[イヌ、ネコ]
■聴覚の異常
聴器毒性[イヌ、ネコ]
難聴[イヌ、ネコ]
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