イヌ・ネコの症状辞典

目に障害がある

 イヌ、ネコにみられる目の異常はほぼ共通しています。イヌには、進行性網膜萎縮しんこうせいもうまくいしゅくや特定の犬種(コリー、シェットランド・シープドッグ)にみられるコリーアイ症候群があり、ネコだけにみられる角膜黒色壊死症かくまくこくしょくえししょう角膜壊死症かくまくえししょうと同病)という病気もあります。

 病気によっては、目のかゆみや痛みを伴うものから、視力に影響するものまで様々な症状がみられます。

 物を見ることには、脳の機能が大きくかかわっています。視力に異常がある場合は、脳に問題があるかもしれません。

原因
 
 目には、結膜、角膜、眼瞼がんけん・瞬膜、前房、ぶどう膜、水晶体などがあります。目の異常には、これら部位の障害、視力障害などが考えられます。
●結膜の障害
 白目に障害を生じると赤くなったり、目をかゆがったりします。
 細菌、真菌、ウイルス、アレルギー、外傷、異物などが原因で起こる病気には、結膜炎があります。

●角膜の障害
 黒目に障害が生じます。角膜の病気が進行すると、目に穴が開き失明することがあります。
 角膜の病気には、角膜炎、角膜浮腫かくまくふしゅ角膜潰瘍かくまくかいよう、角膜黒色壊死症があります。また、涙の量が減少するために角膜炎を起こす乾性角膜炎(ドライアイ)などがあります。

●瞬膜・眼瞼の障害
 イヌやネコには、まぶたと眼球の間に3番目のまぶたがあり、これを瞬膜と呼びます。まぶたを眼瞼といいます。
 瞬膜や眼瞼の病気には、瞬膜突出、眼瞼内反症がんけんないはんしょう眼瞼外反症がんけんがいはんしょう睫毛乱生しょうもうらんせいなどがあります。
 また、まつげ(睫毛)が内側に巻き込まれると眼球に持続的な刺激を与えて、結膜炎や角膜炎を起こすことがあります。

●前房の障害
 前房とは、角膜から水晶体までの間の部位を指します。この部位に出血や炎症性物質(不純物や異常な物質など)をみると、前房出血、前房蓄膿ぜんぼうちくのうなどの病気が疑われます。
 出血の原因には、外傷や血液凝固系の障害、ぶどう膜炎などが疑われ、蓄膿ちくのうの原因には、角膜潰瘍やぶどう膜炎が疑われます。

●ぶどう膜の障害
 ぶどう膜は、虹彩こうさい、毛様体、脈絡膜で構成され、角膜から水晶体までの間にあります。
 この部位に炎症を生じると(ぶどう膜炎)、様々な合併症を引き起こします。
 ぶどう膜炎の原因には、ウイルスによる感染症や外傷、中毒などが考えられます。

●水晶体の障害
 目のレンズを水晶体といいます。水晶体が障害されると失明することがあります。レンズの部分が白くなったり、レンズの収まる位置がずれたりします。
 このような異常を引き起こす病気には、白内障、水晶体脱臼すいしょうたいだっきゅうがあります。白内障は、様々な原因で起こりますが、糖尿病にかかると発症することもあります。

●視力の障害
 目の病気は、視力を低下させることがあります。そのような病気には、網膜剥離もうまくはくりや遺伝性の進行性網膜萎縮などがあります。また、脳腫瘍のうしゅようなどの中枢神経系の病気になると、視力に影響を与えることがあります。

●その他
 眼球の圧力(眼圧)が高まる緑内障、片方の目が落ち込み、まぶたが下がり、瞬膜が突出するといった三つの症状が同時に現れるホルネル症候群、目が正常な位置から出てしまう眼球脱出があります。また、目に腫瘍しゅようが発生することもあります。
 緑内障の原因のほとんどは、房水という眼の中を循環する水の排出障害ですが、ほかの目の病気から続発して緑内障になることもあります。ホルネル症候群は、中耳炎や内耳炎、脳の病気が原因となり目に症状が現れることもありますが、突発性の場合がほとんどです。
観察のポイント
 
 目に異常を起こす原因は様々で、原因によって症状も多様です。目の症状がどのように現れているか、次の点に注意して動物の状態を観察してください。
●目やにの性状・量
 目やにの性質・量を観察してください(サラサラした漿液性しょうえきせいなのか、ドロドロした粘液膿性ねんえきのうせいなのか)。目やにの性状が診断に役立つことがあります。結膜炎、角膜炎、乾性角膜炎などの炎症性の病気では目やにがみられます。

●涙の量
 通常、十分な涙の量がつくられていれば、目は少し潤んで見えます。しかし、目がずっと乾いているようなときは、乾性角膜炎が疑われます。また涙が異常に出る流涙症もあります。

●目のかゆみや痛み
 目にかゆみや痛みがあるかどうか観察します。かゆみ・痛みがある場合、イヌやネコは目を地面にこすりつけたり、前足で目を引っくような動作がみられます。
 とくに痛みが顕著なときには、目を何回もまばたきする眼瞼がんけんけいれんと呼ばれる様子が観察されます。また、痛みのために目をさわらせてくれないかもしれません。
 かゆみがあるときは結膜炎が、痛みがあるときは角膜炎、ぶどう膜炎、緑内障などが疑われます。

●目の状態
 目の色や瞳孔どうこうの大きさを観察してください。結膜が赤くなっていれば結膜炎が疑われます。水晶体が白くなっていれば白内障が疑われます。
 瞳孔は暗い場所では大きくなり、明るい場所では小さくなります。普通、瞳孔の大きさは左右対称です。明るさにかかわらず、瞳孔の大きさが変化しなかったり、左右が非対称であれば、視覚に障害があるか、脳の病気が考えられます。

●視力の低下
 目の病気は視力に影響を与えることがあります。目が見えているのかどうかよく観察してください。物にぶつかることが多ければ、視力が低下している危険性があります。また、暗いところと明るいところで視力に差があるかどうか観察してください。

●目の動きがおかしい
 目が規則的に左右、上下、回転するなどの動きがみられるときは、脳や前庭に異常があるかもしれません。

●ほかの症状を伴う
 様々な病気の一つの症状として、目に障害が現れることがあります。目以外にほかの徴候がないかどうかをよく観察してください。たとえば、視力の異常のほかにけいれん発作を伴うときには、脳の病気が考えられます。
考えられる主な病気
 
■結膜の異常
結膜炎[イヌ、ネコ]

■角膜の異常
乾性角結膜炎[主にイヌ]
色素性角膜炎[主にイヌ]
慢性表層性角膜炎[主にイヌ]
好酸球性角膜炎[ネコ]
角膜潰瘍[イヌ、ネコ]
角膜黒色壊死症[ネコ]
角膜裂傷[イヌ、ネコ]

■瞬膜・眼瞼の異常
第三眼瞼腺逸脱(チェリーアイ)[イヌ]
眼瞼内反症[イヌ]
眼瞼外反症[イヌ]
睫毛乱生[イヌ]
眼瞼炎[イヌ]

■前房の異常
瞳孔膜遺残[イヌ]
虹彩萎縮、虹彩母斑、虹彩嚢胞[イヌ、ネコ]
虹彩毛様体炎(前部ぶどう膜炎)[イヌ、ネコ]

■水晶体の異常
白内障[主にイヌ]
水晶体脱臼[主にイヌ]
糖尿病[イヌ、ネコ]

■網膜・脈絡膜・視神経の異常
網膜剥離[イヌ、ネコ]
進行性網膜萎縮(PRA)[主にイヌ]
コリーアイ症候群[イヌ]

■その他の異常
緑内障[主にイヌ]
ホルネル症候群[イヌ、ネコ]
目の腫瘍[イヌ、ネコ]
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