イヌ・ネコの症状辞典

動作がぎこちない

 体を動かして一つの動作をするとき、いくつかの筋肉が協調して働く必要があります。単純にみえる動作も、様々な筋肉が収縮し協調して行われています。

 ところが、意識や知能に問題がなく、また、運動麻痺うんどうまひがないにもかかわらず、協調的な運動(正常な動き)ができない(筋肉のバランス異常)ことがあります。このような状態を、医学的には運動失調といいます。

 たとえば、まっすぐに歩こうとするのに、曲がってしまうような状態です。症状は、障害されている部位によって異なります。

 運動失調は、脊髄性運動失調せきずいせいうんどうしっちょう、前庭性運動失調、小脳性運動失調の三つに大きく分類されます。このなかで比較的多く認められるのは、前庭性運動失調です。

原因
 
●脊髄性運動失調
 外傷や腫瘍しゅようなどが原因となり、筋肉や関節などからの感覚経路が障害されることによって起こります。

●前庭性運動失調
 中枢性または末梢性まっしょうせいの前庭系が障害されることによって起こります。

●小脳性運動失調
 小脳が障害されて起こります。小脳が障害されると、足をそろえて立つことができず開脚姿勢になったり、足を過度に挙上した不自然な歩行を示すことがあります。また、飲食時に頭部の動きを制御できず、食べ物や飲み水の中に顔を突っ込んでしまうこともあります。

●前庭の病気
 前庭は内耳の一部で、平衡感覚をつかさどっています。
 前庭の病気にかかると、平衡感覚が失われます。また、中耳炎や内耳炎から前庭が障害される場合もあります。

●特発性前庭症候群
 比較的よくみられる病気に、特発性前庭症候群があります。はっきりした原因がわからないので、特発性と呼ばれています。
 イヌでは10歳を過ぎると病気になることが多く、老年性前庭症候群と呼ばれることもあります。ネコでは、年齢に関係なく起こるようです。
 前庭は、頭、目、体幹を、重力に対して正しい位置に保つ機能があります。片側性の前庭疾患がある場合は、障害がある方向へ頭が傾いたり(斜頸しゃけい)、ぐるぐる回り続けることがあります(旋回せんかい運動)。また、眼球が無意識に水平方向や垂直方向に動く現象がみられることもあります(眼球振盪がんきゅうしんとう)。
観察のポイント
 
●頭部が傾く
 イヌ、ネコによくみられる病気として、特発性前庭症候群があげられます。頭が傾く斜頸という症状がよく現れますので、注意して観察してください。

●ほかの症状を伴う
 特発性前庭症候群では、嘔吐おうとや食欲不振がよくみられます。飲水時や歩行時の様子を観察して、以前と違っていないかどうか、ほかのイヌやネコと違っていないかどうか観察します。
考えられる主な病気
 
特発性前庭障害[イヌ、ネコ]
脳外傷[イヌ、ネコ]
脳の血管障害性疾患(脳出血、脳梗塞)[イヌ、ネコ]
神経系の腫瘍[イヌ、ネコ]
薬物中毒[イヌ、ネコ]
発育障害(小脳低形成など)[イヌ、ネコ]
犬ジステンパー[イヌ]
狂犬病[イヌ、ネコ]
トキソプラズマ症[イヌ、ネコ]
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