運動をいやがる、疲れやすい
動物が運動をいやがったり、へたばったりする(疲れやすい)状態を、医学用語では運動不耐性といいます。持続的な肉体運動に耐えられない体質を意味しています。
イヌは散歩させることが多いので、飼い主が異常に気づくことが多いようです。しかし、そのほかの動物では、病気の発見が遅れることもあります。
ネコでは、日頃のしぐさ(身づくろいなど)がみられなくなります。
疲れやすいのは高齢のせいだと思い込んで、軽視する傾向がありますが、重大な病気が隠されていることも多いので注意が必要です。
- 原因
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●循環器や呼吸器の病気
運動時には全身に十分な血液・酸素を送る必要があります。それは酸素消費量が増加するためで、体は心拍数や呼吸数を増やして対応します。その結果、心臓や肺に負担がかかることになります。
心臓に病気があると、それらに対応することができません。運動不耐性は、1歳以下のイヌ、ネコでは先天性の心臓奇形が疑われます。また、イヌは高齢になるにつれて、僧帽弁閉鎖不全症 に代表される心臓の弁の病気が多くなり、運動不耐性が現れるようになります。
さらに、イヌの代表的な病気には、フィラリア(犬糸状虫 )という寄生虫が心臓内に寄生しておこる犬糸状虫症(フィラリア症)があります。これは蚊を媒介とする感染症です。日本国内でも、地域によって感染率に違いがありますが、全国的にみられる病気なので、十分な予防が必要です。
フィラリア(犬糸状虫)は、ネコに感染して症状が出ることもあります。
気管虚脱は小型犬(ポメラニアン等)に多くみられ、その場合は、突然死することがあります。そのほとんどは遺伝性体質が考えられていますが過齢と共にその発生は増加します。また、短頭種(パグ、狆 、チワワ、ブルドッグなど)のイヌには軟口蓋過長症 がよくみられ、呼吸のしづらさから運動を嫌う場合があります。
ネコでは、そのほかに胸に膿 がたまる膿胸 や気管支喘息 があります。
●血液の病気
血液中の赤血球は、肺で酸素を受け取って全身に運ぶ働きがあります。貧血になると、赤血球が減るので酸素が全身にいきわたらなくなり、運動を嫌ったり疲れやすくなったりします。
貧血の原因は多岐にわたりますが、正確な診断をするためには、骨髄検査等の特殊検査を必要とすることがあります。
●骨・関節の病気
運動時には、筋肉や骨・関節に負担がかかります。運動によって痛みが現れる場合は運動を嫌うようになります。骨・関節に痛みを起こす病気は、ネコよりもイヌに多くみられます。
●肥満
最近、イヌやネコの肥満が問題になっています。肥満動物は、四肢へ過剰な負担がかかり、体温調節が難しいことから、運動を嫌ったり、疲れやすくなったりします。
●内分泌の病気(ホルモンの異常)
イヌによくみられる副腎皮質 の病気や甲状腺機能低下症 は、動きが鈍くなる、ぐったりする、疲れやすいといった症状がみられます。
- 観察のポイント
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●日頃の行動・習慣の変化
イヌは食事と散歩が非常に好きな動物です。ときに、飼い主を引っ張ってどんどん先を歩くことがよくあります。日頃から、イヌでは散歩の様子、ネコでは身づくろいなどのしぐさを観察するようにしてください。
●咳 や荒い呼吸がみられる
循環器や呼吸器の病気がある場合は、運動や興奮したときに、咳や荒い呼吸をみることがあります。
●舌や歯ぐき(歯肉)の色の変化
舌の色が紫色になったり、失神するような場合は、一刻を争う状況も考えられます。
貧血は、原因によって緊急を必要とすることがあります。普段から、歯肉が健康的な色(ピンク色)かどうか、チェックしておく必要があります。
- 考えられる主な病気
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■循環器や呼吸器の病気
先天性心疾患[イヌ、ネコ]
犬糸状虫症[主にイヌ]
弁膜の疾患[イヌ、ネコ]
心筋症[イヌ、ネコ]
不整脈[イヌ、ネコ]
胸水症[イヌ、ネコ]
腹水症[イヌ、ネコ]
気管虚脱[主にイヌ]
軟口蓋過長症[主にイヌ]
膿胸[主にネコ]
漏斗胸[イヌ、ネコ]
心膜横隔膜ヘルニア[イヌ、ネコ]
腹膜-心膜横隔膜ヘルニア[イヌ、ネコ]
喘息[ネコ]
■血液の病気
貧血[イヌ、ネコ]
■骨・関節の病気
股関節形成不全[主にイヌ]
大腿骨骨頭の虚血性壊死(レッグ・ペルテス)[イヌ、ネコ]
変形性関節症[イヌ、ネコ]
椎間板ヘルニア[主にイヌ]
変形性脊椎症(変形性関節炎)[主にイヌ]
■内分泌の病気
甲状腺機能低下症[主にイヌ]
副腎皮質機能亢進症[主にイヌ]
副腎皮質機能低下症[主にイヌ]
肥満[イヌ、ネコ]

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