イヌ・ネコの症状辞典

下痢をする

 下痢とは、便に含まれる水分量が増加した状態をいいます。下痢便には、軟らかい便もあれば、水様便もあります。

 急性の下痢や進行の早い下痢は急激に悪化し、とくに子イヌや子ネコ、老齢のイヌやネコでは、1日から数日で死亡する場合があります。下痢をあなどらず、早い時期での診断、治療が望まれます。

原因
 
 下痢をするから病気とは限りません。人間と同様で、牛乳を飲むと下痢をするイヌやネコもいますし、また、アレルギーやストレスで下痢をすることもあります。
 イヌ、ネコは様々な病気で下痢を起こします。一般的には、寄生虫やウイルス、細菌などの感染によって下痢を起こすことが多く、胃、大腸、小腸に異常があっても、下痢を起こします。
 また、犬パルボウイルス感染症、猫汎白血球減少症ねこはんはっけっきゅうげんしょうしょうなど、イヌ、ネコに特有な伝染性の病気もあります。
観察のポイント
 
●便の量と性状
 一般に小腸性下痢では1回の排便量は増加しますが、大腸性下痢では逆に少ないか正常のことがほとんどです。
 大腸性下痢では、水様下痢というより、普段は軟便で、ときに下痢便という状態が長期間続きます。排便量は通常どおりか減少し、体重が少しずつ減少するのが特徴です。

●環境の変化
 急性の小腸性下痢は、食事内容の変更や拾い食い、引っ越し、移動などのような環境の変化によって起こります。
 一般的に、嘔吐おうとなどのほかの症状がない場合は、一過性のことが多いようです。

●全身症状などを伴う
 嘔吐や衰弱などの全身症状を伴う場合は、細菌感染、ウイルス感染が疑われます。感染症では、ほかに下血や発熱、脱水、腹痛などの症状を伴います。重篤な症状を示すことが多く、早急な治療が望まれます。

●特殊な病態を示す下痢
 慢性小腸性下痢は、特殊な病態を示すことがあり、原因もアレルギー性、腫瘍性しゅようせい食餌性しょくじせい、感染性、機能性と多様です。これらの症状がみられる場合には、獣医師による確定診断と治療が必要です。

●特殊な慢性の下痢
 消化管には直接問題がないにもかかわらず慢性の下痢を起こす病気には、膵外分泌不全すいがいぶんぴつふぜんによって消化酵素の分泌がないもの、胆汁の分泌障害による肝・胆道系疾患、甲状腺機能亢進症こうじょうせんきのうこうしんしょうなどがあります。

●便に血が混じっている
 便に一部血が混じっている場合は、好酸球性腸炎こうさんきゅうせいちょうえん、リンパプラズマ細胞性腸炎、肉芽腫性腸炎にくがしゅせいちょうえん、リンパしゅ小腸癌しょうちょうがんが疑われます。
 便全体が赤い場合は、出血性腸炎(細菌感染、ウイルス感染)などが疑われます。
考えられる主な病気
 
■急性下痢
消化器内寄生虫症[イヌ、ネコ]
消化管細菌感染症[イヌ、ネコ]
細菌病[イヌ、ネコ]
ウイルス感染症
 犬コロナウイルス感染症[イヌ]
 犬ジステンパー[イヌ]
 犬パルボウイルス感染症[イヌ]
 猫汎白血球減少症[ネコ]
毒素[イヌ、ネコ]
腸炎[イヌ、ネコ]
出血性胃腸炎[イヌ]
急性膵炎[イヌ、ネコ]

■慢性下痢
腸炎[イヌ、ネコ]
〈炎症性〉
慢性特発性腸疾患(好酸球性腸炎、肉芽腫性腸炎)[イヌ、ネコ]

〈腫瘍〉
胃の腫瘍[イヌ、ネコ]
腸の腫瘍[イヌ、ネコ]

〈食餌性〉
食餌性過敏症[イヌ]

〈感染性〉
慢性特発性腸疾患(小腸内細胞過剰増殖)[イヌ、ネコ]
ヒストプラズマ[イヌ、ネコ]
ジアルジア症[イヌ、ネコ]

〈機能性〉
腸閉塞(イレウス)[イヌ、ネコ]
慢性特発性腸疾患(腸リンパ管拡張症)[イヌ、ネコ]

〈膵外分泌疾患〉
膵炎[イヌ、ネコ]
膵外分泌不全症[イヌ、ネコ]

〈その他〉
肝臓および胆嚢・胆管の疾患[イヌ、ネコ]
甲状腺機能亢進症[主にネコ]
クロストリジウム(注1)
グルテン不耐性腸症(注2)[イヌ]
ラクトース不耐性腸症(注3)[イヌ]
若年性腺房萎縮(注4)[イヌ]

注1【クロストリジウム】細菌(サルモネラやカンピロバクターなど)の一種で、食中毒の原因菌となり、じょうや動物の腸管内に生息。クロストリジウムに感染すると、下痢や嘔吐などの症状を引き起こす。
注2【グルテン不耐性腸症】小麦に含まれる植物性タンパク質をグルテンという。グルテンが含まれているドッグフードを摂取すると腸が障害されて栄養素を吸収できず、下痢をすることがある。グルテンの摂取をやめると症状が改善する。
注3【ラクトース不耐性腸症】ラクトースとは乳糖のこと。ラクトースを含む食物、牛乳、粉ミルクを摂取すると下痢をすることがある。たとえば、人間でも牛乳を飲むと下痢をすることがあるように、イヌでも同様の症状を起こすことがある。これは、乳糖を分解する酵素の働きが低下したり欠損することによって、乳糖を吸収できなくなるため。
注4【じゃく年性腺房萎ねんせいせんぼういしゅく】ジャーマン・シェパード・ドッグの子イヌに遺伝的に認めることがあり、1歳までに症状が出現する。よく食べるにもかかわらず体重減少と軟便を認め、ふんしょくがみられることがある。これは膵臓すいぞうが消化酵素をつくれなくなるために起こる。
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