呼吸が苦しそう
生物が生命を維持するために必要な酸素を体内に取り入れ、不要となった二酸化炭素を体外に放出する働きを呼吸といいます。
運動したり、急に激しく体を動かしたりすると呼吸が苦しくなる(呼吸困難)のは、イヌ、ネコによくみられる一般的な状態です。ところが、普通に行っている呼吸では体が必要とする十分な酸素が得られないときや、体温を調節する(呼吸を促進して蒸散を促す)ときに、呼吸が苦しくなることがあります。
- 原因
-
鼻、
喉頭 、気管など、呼吸をするときの空気の通り道にあたる部位が病気かもしれません。また、血液を送り出す心臓に異常が生じると呼吸が困難になります。そのほか、発熱、貧血、日射病、熱射病、けがや交通事故によっても起こります。
- 観察のポイント
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日頃から呼吸の様子を注意してみましょう。1分間にイヌでは約15~30回、ネコでは約20~35回の呼吸をしています。
呼吸の異常を感じたときは回数だけでなく、鼻、口、胸とおなかの動き、さらに呼吸に伴って音(ヒューヒュー、ゼーゼーなど)が聞こえるかどうかをよく観察します。
同時に舌や口唇の色に変化がないかどうか注意しましょう。
■速い呼吸(呼吸促迫)
激しい運動、興奮、緊張、高い気温などに反応してみられます。同時にパンティング(注1)と呼ばれる呼吸が、とくにイヌではよくみられます。健康な状態ではパンティングがみられても口唇や舌はピンク色です。
パンティングは異常な症状ではありませんが、非常に長く続くとき、同時に震えがみられたりするとき、また、思いあたる理由もなくパンティングがみられるときは、病気を疑う必要があります。
●発熱を伴う
発熱を伴う病気にかかっているとき、動物は体内の熱をパンティングによって放出して、体温を調節します。
イヌ、ネコは直腸温が38~39℃の平熱範囲にあるかどうか確認する必要があります。ただし、運動直後や極端な興奮でも体温は上がりますから、状態をよく観察して判断しましょう。
■異常な呼吸
●鼻翼呼吸
空気の吸入時の鼻翼(小鼻)が拡大します。鼻の穴がひくひくしているようにみえます。
●開口呼吸
呼吸が苦しいときに口を大きく、ぱくぱく開けてする呼吸をいいます。
●起座呼吸
おすわりした状態で、前足を開き、顎 を突き上げて胸を大きく動かしてする呼吸をいいます。腹水症を起こしていると、このような呼吸がイヌやネコでみられます。
●浅速呼吸
呼吸回数は多いものの、胸の動きの少ない浅い呼吸をいいます。気胸や胸水症などでは、このような呼吸をみることがあります。
●ガーガーと大きな音のする呼吸
小型犬に多くみられ、気管虚脱 (注2)の危険性があります。
●ゼーゼーと音のする呼吸
気管支炎を起こしている危険性があります。
これらの異常な呼吸の多くは表情も苦しそうで、飼い主が呼びかけても余裕がなく反応が鈍くなります。酸素不足と炭酸ガスの排泄 が低下すると、舌や口唇にチアノーゼ(青紫色になる)症状がみられることがあります。
●ほかに異常な症状を伴う
震え、よだれ、吐くなど、ほかの異常を伴う場合は合併症も考えられますので、とくに注意が必要です。
- 考えられる主な病気
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鼻孔狭窄症[イヌ、ネコ]
鼻腔・副鼻腔の腫瘍[イヌ、ネコ]
喉頭浮腫[主にイヌ]
喉頭の腫瘍[イヌ、ネコ]
軟口蓋過長症[主にイヌ]
犬伝染性気管・気管支炎(ケンネル・コーフ)[イヌ]
犬ジステンパー[イヌ]
気管虚脱[イヌ]
気管閉塞[イヌ]
気管支炎[イヌ、ネコ]
肺炎[イヌ、ネコ]
膿胸[主にネコ]
肺腫瘍[イヌ、ネコ]
血胸[イヌ、ネコ]
肺水腫[イヌ、ネコ]
乳び胸[イヌ、ネコ]
気胸[イヌ、ネコ]
犬ヘルペスウイルス感染症[イヌ]
猫伝染性呼吸器症候群[ネコ]
猫カリシウイルス感染症[ネコ]
先天性心疾患(肺動脈狭窄症、心室中隔欠損症、動脈管開存症、ファロー四徴症)[イヌ、ネコ]
犬糸状虫症[主にイヌ]
心筋症[イヌ、ネコ]
僧帽弁閉鎖不全症[主にイヌ]
胸水症[イヌ、ネコ]
腹水症[イヌ、ネコ]
貧血[イヌ、ネコ]
頭部外傷[イヌ、ネコ]
横隔膜ヘルニア[イヌ、ネコ]
日射病、熱射病[イヌ、ネコ]
不凍液(自動車用)による中毒[イヌ、ネコ]

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