イヌ・ネコの症状辞典

むくむ

 動物の体を構成している細胞は、多くの水分(体液)で占められています。普段、体液の量は一定に保たれています。しかし、何らかの異常が起こると皮下組織に体液が過剰にたまり、むくみ(浮腫ふしゅ)が生じます。

 むくみは様々な病気を原因として、イヌ、ネコに起こる症状の一つです。

 むくみは全身に起こるものと体の一部に局所的に起こるものに分けてとらえます。

原因
 
■全身性のむくみ
●心臓の病気
 心臓から拍出される血液量が減少すると、腎臓じんぞうでの尿の産生を抑える抗利尿ホルモンの一つであるアルドステロンが働き、体の中に水分を取り込みます。心臓の病気が原因で起こるむくみは、その取り込みが過剰になるために生じます。
 むくみを起こす病気には、イヌでは犬糸状虫症、先天性心疾患、心筋症などがあります。ネコの病気はイヌと類似しています。
 むくみに伴って、せき、運動中にへこたれる、元気がない、体重減少などの症状が、場合によっては腹水などがたまり体重増加をみることがあります。

●腎臓の病気
 腎臓の機能が低下することによって、水分やナトリウムが体内に過剰に貯留するためにむくみが起こります。また、体に必要なタンパク質が尿中に排泄はいせつされてしまうと、タンパク質が不足して、むくみが起こります。腎臓の病気には、腎盂腎炎じんうじんえん糸球体腎炎しきゅうたいじんえんなどがあります。

●肝臓の病気
 肝臓では血液中のタンパク質の一種であるアルブミンを合成しています。アルブミンは、血液の浸透圧を調節する役割を果たしていますが、不足すると低アルブミン血症を起こして、末梢まっしょうの組織に水分が貯留するようになり、むくみが起こります。肝炎、肝臓腫瘍かんぞうしゅようなどがあります。

●消化器の病気
 消化器の病気にかかっていると、体に必要な栄養、タンパク質を吸収できなくなり、むくみを起こす原因になります。イヌのリンパ管拡張症、慢性の下痢などでは、低タンパク血症を起こし、むくみを併発します。

●アレルギー
 食物やワクチン注射などを原因とする急性アレルギーでは、主に目や唇の周囲にむくみがみられます。また、体の随所に小さなこぶ上のむくみとして現れることがあります。


■局所性のむくみ
 体の一部に起こる局所性のむくみは、静脈やリンパの流れが局所的に悪いために、また、炎症のために起こることがあります。フレグモーネ、熱傷、感染症、イヌの肥大性骨関節症などでみられます。
観察のポイント
 
●むくみが起こる部位
 むくみが現れやすく観察しやすい部位は、イヌでは、四肢、目および口唇部周辺です。ネコは、四肢で確認するとよいでしょう。

●冷感、痛みのない
 多くは冷感があり、さわっても痛みのない腫れとして確認できることが特徴です。
 また、打撲や打ち身の腫れは、通常はさわると痛がったり赤くなったりしますので、よく観察して判断しましょう。

●指で押してももとに戻らない
 むくみのある皮膚は、指で押してももとに戻らない圧痕あつこん(指で押したままのくぼみ)がみられます。ときに、腹水症、胸水症を伴うこともあります。

●全身性のむくみが現れる時期
 心臓や腎臓、肝臓の病気を原因とする全身性のむくみは、数日から数週間かけて、ゆっくりと現れてくることが多いので、注意してください。

●ほかの症状を伴う
 心臓の病気では、咳、運動中にへこたれる、気を失う、体重の減少、腹水、呼吸の異常などの症状を伴うことがあります。
 腎臓、肝臓、消化器の病気では、体重の減少や食欲の減退、吐いたり、下痢などの症状をみることがあります。
 むくみが現れたら、これらの症状がないかどうか注意深く観察してください。

●局所性のむくみの原因
 体の一部にみられるむくみは、けがや熱傷(やけど)などが原因になっていることがあります。原因が特定できるものがないか状況をよく観察してみましょう。
考えられる主な病気
 
■全身性のむくみ
先天性心疾患(肺動脈狭窄症、心室中隔欠損症)[イヌ、ネコ]
心筋症(拡張型心筋症)[イヌ、ネコ]
胸水症[イヌ、ネコ]
腹水症[イヌ、ネコ]
腎盂腎炎[イヌ、ネコ]
糸球体腎炎[イヌ、ネコ]
慢性肝臓病(慢性肝炎、肝硬変、肝線維症)[イヌ、ネコ]
肝臓腫瘍[イヌ、ネコ]
慢性特発性腸疾患(腸リンパ管拡張症)[イヌ、ネコ]
慢性下痢[イヌ、ネコ]
犬糸状虫症[主にイヌ]

■局所性のむくみ
フレグモーネ[イヌ、ネコ]
熱傷[イヌ、ネコ]
感染症[イヌ、ネコ]
アレルギー[イヌ、ネコ]
肥大性骨症[イヌ、ネコ]
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