イヌ・ネコの症状辞典

おなかが膨れる

 イヌ、ネコは、様々な原因からおなか(腹部)が膨れます(腹部膨満)。

原因
 
 原因には次のようなものがあげられます。
・腹部内の臓器(胃、腸、肝臓、膀胱ぼうこう腎臓じんぞうなど)そのものが大きくなる場合。
・腹部内の臓器以外(腹水など)を原因とする場合。
・腹部の筋肉の緩みやたるみ、皮膚が薄くなることによって大きくみえることがある。
・妊娠、肥満、食べ過ぎなどによる場合。
 また、おなかが大きくなる病気には、次のようなものがあります。
●腹部内の臓器が大きくなる
【消化器の病気】 とくにイヌでは大型犬に多い胃拡張胃捻転症候群いかくちょういねんてんしょうこうぐん(胃内での急激なガスの貯留)、ネコの巨大結腸症(著しい便秘による宿便)、鎖肛さこう(先天性の肛門閉鎖こうもんへいさによる宿便)、ネコの肝リピドーシス(脂肪肝)による肝臓腫大かんぞうしゅだい、さらに消化器の腫瘍しゅようなどがあります。
【泌尿器の病気】 尿石症(結石の尿道閉塞にょうどうへいそくによる膀胱内尿貯留ぼうこうないにょうちょりゅう)、膀胱麻痺ぼうこうまひ椎間板ついかんばんヘルニアなどによる神経障害を原因とする尿貯留)、腎臓自体が腫大しゅだいする嚢胞腎のうほうじん水腎症すいじんしょうなどが一般的にみられます。
【生殖器の病気】 子宮蓄膿症しきゅうちくのうしょう(子宮内の膿貯留)、子宮水腫しきゅうすいしゅなどがあります。
【その他】 腫瘍性疾患では、肝臓腫瘍、脾臓血管肉腫ひぞうけっかんにくしゅ停留精巣ていりゅうせいそう精上皮腫せいじょうひしゅ(セミノーマ)、セルトリ細胞腫さいぼうしゅ、リンパ節の腫瘍。
 また、消化管の寄生虫によってせている子イヌ・子ネコは、摂食時のみ、胃の内容量の増加でおなかが極端に大きく膨れることがあります。

●臓器以外の原因でおなかが膨らむ
【腹水の増加】 様々な原因で、おなかに腹水(おなかの中の体液)がたまった状態です。
【循環器の異常】 イヌにみられる犬糸状虫いぬしじょうちゅう症(フィラリアの寄生による心機能低下)、先天性心疾患、イヌの拡張型心筋しんきん症などがあります。
【消化器の病気】 肝炎やリンパ管拡張症などによる低タンパク血症によっても腹水が貯留します。
【その他】 腹膜炎(腹腔内感染ふくくうないかんせん、ネコではコロナウイルスによる伝染性腹膜炎の場合もあり)を原因とする場合もあります。

●筋肉や皮膚がたるんでいる、緩んでいる
 イヌの副腎皮質機能亢進症ふくじんひしつきのうこうしんしょうでは、腹部の筋肉がたるみます。そのため、腹部が垂れて膨らんでみえます。

●肥満
 おなかの内側(皮下)の脂肪蓄積によって、もっとも身近に多くみられる状態です。差し迫った問題はなくても、糖尿病や椎間板の病気、関節の病気などを警戒する必要があります。ただの肥満と思い込んでいたら、実際は病気のせいで、おなかが膨れることもよくあります。注意深く観察しましょう。

●食べ過ぎ
 とくに食欲の旺盛おうせいな子イヌ、子ネコでは、飼い主が見ていないところで、短時間に過食して急速におなかが大きくなることがあります。一時性のもので、時間がたてばもとに戻ります。

●妊娠
 妊娠していても出産直前までおなかの膨らみがはっきりしない場合があります。イヌやネコは交配から平均して60日間前後で出産します。ほかの病気が疑われる場合は、妊娠の確定、難産の危険性の有無、妊娠胎子数の確認が必要です。獣医師の診察と必要な検査を受けるとよいでしょう。
観察のポイント
 
 日頃から食事量のチェックと定期的な体重測定を行い、目立った変化がみられないか、観察する習慣をつけましょう。
 長毛種のイヌやネコでは、肥満だと思っていても、よく観察すると肋骨ろっこつや背骨がごつごつと目立っていたり、毛づやがよくないということがあります。おなかの大きさだけにとらわれず、全身状態を観察します。
●おなかが膨れてきた時期
 おなかが大きくなってきた時期はいつ頃からですか。

●排尿、排便の異常
 排尿、排便の回数に変化はみられませんか。排尿時や排便時にいきみやしぶりがみられて、おなかが膨れているときは、尿石にょうせき症、巨大結腸症の危険性があります。

●食事摂取量の変化
 食事の量に変化はありませんか。

●腹部以外の変化
 ほかに異常がみられませんか。

●おなかが全体に大きくなっている
 おなかがブヨブヨと軟らかくぽってりしている場合は、腹水かもしれません。

●一部が大きく突出して目立つ
 おなかの一部が飛び出したようになっていて、さわると硬いときは、腫瘍の疑いがあります。

●左側が短時間で急激に大きくなる
 大型犬で嘔吐様おうとようのしぐさを苦しそうに繰り返し、短時間でおなかの左側が大きく膨らんできたときは、胃捻転、胃拡張胃捻転症候群の疑いがあります。
考えられる主な病気
 
先天性心疾患(肺動脈狭窄症、心室中隔欠損症)[イヌ、ネコ]
心筋症(拡張型心筋症)[イヌ、ネコ]
慢性肝臓病(慢性肝炎、肝硬変、肝線維症)[イヌ、ネコ]
肝臓腫瘍[イヌ、ネコ]
脾臓腫瘍(血管肉腫)[イヌ、ネコ]
多発性嚢胞腎(嚢胞腎)[イヌ、ネコ]
水腎症[イヌ、ネコ]
副腎皮質機能亢進症[主にイヌ]
胃拡張胃捻転症候群[主にイヌ]
胃捻転[イヌ、ネコ]
巨大結腸症[主にネコ]
脂肪肝[主にネコ]
尿結石(尿管結石、膀胱結石、尿道結石)[イヌ、ネコ]
腹膜炎[イヌ、ネコ]
猫伝染性腹膜炎[ネコ]
膀胱麻痺[イヌ、ネコ]
精巣腫瘍[雄イヌ、雄ネコ]
子宮蓄膿症[雌イヌ、雌ネコ]
子宮水腫[雌イヌ、雌ネコ]
犬糸状虫症[主にイヌ]
慢性特発性腸疾患(腸リンパ管拡張症)[イヌ、ネコ]
鎖肛[イヌ、ネコ]
消化管内寄生虫症[イヌ、ネコ]
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