イヌ・ネコの症状辞典

食欲がまったくない

 イヌ、ネコにとって食欲は健康のバロメーターです。食欲がなくなることは、不健康を意味します。食欲がまったくない(食欲廃絶はいぜつ)ようなときは、病気にかかっていて、その病気が重いかもしれません。

原因
 
●食欲がなくて食べられない(食欲廃絶)
 一般的な病気が考えられます。たとえば、肝臓、腎臓じんぞう、心臓、肺、脳などの内臓の障害、腫瘍しゅよう、痛み、感染症などです。ほかに嘔吐おうと、下痢、せき、呼吸困難、排尿・排便障害、歩行異常、発熱などを伴うことがあります。

●食欲があるのに食べられない
 一般的には首から上の部位、のど、口腔こうくう内、鼻や脳の一部に障害があることが考えられます。
 たとえば、鼻に障害があるのでにおいをかげなかったり、口やのどに痛みがあるために、食物をんだり飲み込めない場合などがあるでしょう。
【口腔内の異常】 口内炎、重度の歯石しせきによる歯肉炎しにくえん歯周病ししゅうびょう歯槽膿漏しそうのうろう)などが疑われます。ネコでは、猫白血病や猫免疫不全症候群、猫カリシウイルス感染症にかかっていると、口腔内にも異常がよくみられます。また、歯に異物(魚の骨など)がはさまっている場合もあります。
【鼻、のどの異常】 猫伝染性鼻気管炎、腫瘍などで、異常が起こります。
【その他】 下顎かがくの骨折、咀嚼筋筋炎そしゃくきんきんえんによって口が開けられない(開口困難)、三叉神経麻痺さんさしんけいまひによる食べこぼし、ストレスなどが考えられます。
観察のポイント
 
 いつから、どのような症状を示すようになったのかわかりますか。日頃から、動物を観察する習慣を身につけてください。
●口を痛がり、よだれを垂らす
 口腔内や鼻、のどの異常が考えられます。とくに、猫カリシウイルス感染症や猫伝染性鼻気管炎などにかかっているとよくみられます。

●ネコが外から帰ってきたら、食欲がない
 外で交通事故に遭いショックを受けていたり、下顎骨折を起こしていることがあります。ケンカでまれた傷が原因で熱があるために食欲がなくなることもあります。

●においをかぐだけで口に入れない
 一般的な病気のほかに、口内炎や咀嚼筋筋炎などにかかっていて、開口すると痛みを感じる場合があります。また、三叉神経麻痺などのように口の周りや舌を動かす筋肉が麻痺まひを起こし、摂食が困難になっていることも考えられます。

●食物にまったく興味を示さない
 一般的な病気のほかに、精神的なストレスが考えられます。

●精神的ストレス
 動物の性格によっては、精神的な影響を受けて食欲が低下することがあります。入院やホテル宿泊によって、家族から離れたり手術などによる恐れや痛みによるストレス、飼育環境の変化などです。たとえば、家族に赤ちゃんが生まれたり、慣れない来客によって、食欲に影響することも少なくありません。
 また、食物の種類を変えたり、食物に薬を混ぜたことによって、食事の味が変わり食べなくなることもあります。
考えられる主な病気
 
口内炎[主にネコ]
歯肉炎[イヌ、ネコ]
歯周病[イヌ、ネコ]
鼻炎など鼻腔・副鼻腔の疾患[イヌ、ネコ]
咀嚼筋筋炎(好酸球性筋炎)[イヌ]
特発性三叉神経炎[主にイヌ]
猫白血病ウイルス感染症(猫レトロウイルス感染症)[ネコ]
猫免疫不全ウイルス感染症[ネコ]
猫カリシウイルス感染症[ネコ]
猫伝染性鼻気管炎[ネコ]
腫瘍[イヌ、ネコ]
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