相談・獣医師回答・コメント
プペ(質問主)
犬 8歳 メス チワワ
体重:1.6kg
飼育歴:7年7ヶ月
居住地:埼玉県川越市
飼育環境:屋外
3歳時に癲癇発作を起こしステロイドを処方されました。ステロイドは長期使用すると肝臓等に負担がかかるとのことで5歳の時に医師の判断でステロイドを止め1ヶ月程度で1日に18回から20回以上の発作があり、
病院を変えて処置していただき落ち着いたところでMRI検査。
専門医でも見落とす程度の極々小さい脳炎と判明。
その後、ステロイドは毎日→1日おき、そして先日までは3日に一度飲ませていましたが、
つい先日眼球に傷が入り9日に瞬膜フラップで手術前の血液検査で肝臓の数値が異常に高いことがわかったとのことを術後に聞きました。
そして、13日に退院。ステロイドはやめて
代わりに肝臓の薬2種類出されたましたが、
翌日もう片方の目が目やにで開かなくなり、食欲もないく、小刻みな震えで再び病院に15日に連れて行くと肝臓の数値が更に上がっているとのこと。また目のこともあるので現在も入院しています。
ステロイドの副作用で肝臓の数値が上がっているところに麻酔の影響で更に上がってしまったとのことですが、この先目も残せるかわからないと言われていてもう片目にも傷が入っていると言われこの状況で肝臓のことも加わりどうなるのか非常に不安です。
一度ステロイドで肝臓が悪くなって良くなる期待はどれくらいあるのでしょうか?
超音波検査で腫瘍らしきものは発見できなかったとのことです。
年齢は7歳です。
どうぞ宜しくお願い致します。
9日血液検査
ALT 判定不能
AST 86
ALKP 368
GGT 24
TBIL 0.1
LIP-PS 46
15日血液検査
ALT 判定不能
AST 判定不能
ALKP 1534↗︎
GGT 49↗︎
TBIL 1.9↗︎
LIP-PS 338
cCRP-PS 7.0
2022-01-17 11:24:06
専門の獣医師からの回答
基礎疾患としての脳疾患に加えて眼科疾患と胆胆道系疾患を併発した非常にやっかいな症例です。
まず,脳疾患に関しては,経過やステロイドに対する治療効果から肉芽腫性髄膜脳炎または壊死性白質脳炎の可能性を疑われているのかと推察されますが,そうであれば通常ステロイドの休薬が難しい疾患です。
ステロイドの副作用としては,高用量の長期投与では,多飲多尿,肝腫大,ステロイド性肝障害,糖尿病,脱毛症などがしばしば問題となります。このため,ステロイドの長期投与を行う場合は,治療効果が維持できる最低量に調節することが重要で,また定期的に副作用のチェックが必要となります。
今回,眼球に傷(処置内容から潰瘍性角膜炎と思われます)を併発とのことですが,ステロイドの使用は角膜潰瘍の治癒を遅らせたり病態を悪化させることがあり,ステロイド投与を完全に休薬できない症例では,治療に苦慮します。
さらに今回肝臓検査の数値が悪化したとのことで,ご質問を頂きましたが,この点についてはお示しいただいた検査項目のみでの判断は難しいので一般論から説明します。
ステロイドによる肝酵素異常は,まず薬物誘導性にALPの上昇が犬特有の変化として起こります。
このためステロイド投与中の軽度のALPの上昇は,犬ではあまり心配する必要はありません。
しかし,ステロイドの投与により肝腫大に加え逸脱性肝酵素であるASTやALTが上昇する場合には,肝細胞が腫脹し,ステロイド性肝障害が起こっている可能性があり,肝庇護剤の投与やステロイドの減薬を検討します。
本症例においては,ステロイド休薬中にも関わらず,短期間に逸脱性肝酵素(AST,ALT)と誘導性肝酵素(ALP,GGT)が短期間に急上昇しており,これは肝臓細胞壊死を伴う肝障害に加えて,胆汁うっ滞が起こっていることを示唆します。しかも,15日の検査で胆汁排泄障害を示す高ビリルビン血症(黄疸)ならびに急性炎症の存在を意味する犬CRPの上昇も認められています。
高ビリルビン血症に関しては,肝性黄疸と肝後性黄疸(閉塞性黄疸)の鑑別が重要ですが,元気食欲に問題がなければ,前者の可能性は低いと思われます。
また軽度ではありますが,膵酵素であるリパーゼの上昇も見受けられますので,膵炎の併発による不完全肝外胆管閉塞や胆管炎,胆嚢炎,胆石あるいは胆嚢粘液嚢腫などの疾患も疑う必要があります。
ステロイドの長期投与がなされている犬では胆嚢疾患の発生率は非常に高くなります。
いずれにしても,15日の検査所見は肝胆道系に極めて深刻な異常が起こっていることを意味します。
現在の一般状態にもよりますが,主治医の先生とご相談されて,必要により二次診療施設でのセカンドオピニオンも含め精密検査をお薦めします。
2022-01-28 22:15:43
プペ(質問主)
大変丁寧なご回答ありがとうございます。
今現在も入院中で肝臓の数値は穏やかに下がってきているものの長期化する場合もあるとのことで先日病院に入院費用や今後の見通しを聞きに行きました。
その時の検査ではALT、ALKPが1000以上でしたが、その後の検査で半分以下に落ちたと言われもう一回血液検査後に問題がなければ退院し、通院での治療となるようです。
今後は肝臓の他に血膜フラップ手術を行った抜糸や、ステロイドなしで癲癇発作が起きた場合等々飼い主としてはまだまだ不安要素がありますが、退院時には先生にアドバイスいただいた二次診療施設での精密検査も考えて主治医と話をし、後悔のないように行動出来ればと思っています。
この度は貴重なお時間を頂戴し感謝しかありません。
本当にありがとうございました。
2022-01-29 16:06:29
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