相談・獣医師回答・コメント
NAO(質問主)
犬 15歳 オス ミニチュアダックスフンド
体重:6.6kg
飼育歴:15年1ヶ月
居住地:埼玉県さいたま市浦和区
飼育環境:室内
長文になり恐縮ですがよろしくお願いいたします。
<ご相談内容>
左後ろ足大腿部からお尻にかけてのテニスボール大の固いしこりの治療について
<犬>
ミニチュアダックスフント 雄(去勢済) 15歳3ヶ月 6.6kg。
<現在の状態>
ふだんと変わりなく元気・食欲あります。
左後ろ足をかばっているようにもみえなくもありませんが、短い散歩ながらも小走り等しています。(5歳の時にヘルニアの症状が出てからふんばりが弱いですが)
<経緯>
・今年2020年7月末
左足大腿部にしこりを発見し(2㎝位だったかと思います)針による細胞検査をしていただいたところ、脂肪腫とのことでした。(他の部位にも診ていただいた脂肪腫が幾つかあります)
・11/5
血液・尿検査(今年2020年5月に慢性腎臓病のステージ2と診断)があり、血液検査は半年に1回、尿検査は2か月に1回するようにしています)。
SDMAの値が前回の20から25に上がっていること、尿の比重が1.012と軽いこと、尿タンパク/クレアチニン比が1+200mg/gCrであり、引き続き食事と水をたくさん飲ませるよう気をつけるようにとのことでした。
現在、市販の療法食とフォルテコール(半錠/日)、ネフガード(2錠/日)をあげています。
・12/10
8種ワクチンの接種(事情があってかかりつけ医ではない別の病院で受けました)
・12/12
7月と同じ、左足の大腿部からお尻にかけてテニスボール位の大きさの固いしこりがあることに気づき、すぐに病院へ行きました。
11月の検査の時にはなかったと先生も仰っていて、急激に大きくなったものであればよくないものの可能性が高いとのことでした。
針を刺した検査で脂肪と赤血球の塊とのことで、止血剤(トラネキサム酸)と抗生剤(セファレキシン)を処方していただき、1週間の様子見となりました。
・12/20
しこりは少し小さくなっているものの、大きな変化はないため薬は終了。
超音波もあてていただいた結果、考えられる病状は「脂肪肉腫」か「筋間脂肪腫」では、とのことでした。
まずはより詳しい検査(生検というのでしょうか)が必要だが、それには全身麻酔が必要なため、腎臓病のリスクがあることを仰っていました。
その後、結果次第でおそらく摘出手術が必要だが、最悪の場合は断脚の可能性もある、とのことです。
(この時の尿検査で、尿タンパク/クレアチニン比が1+400mg/gCrでした。)
<ご相談>
前に飼っていた犬を全身麻酔がきっかけで亡くしており(40年も前でまったく別の病院ですが)、ずっと全身麻酔を避けてきました。が、今回ばかりは腎臓病のリスクがあっても検査は致し方ないと考えております。
ただ、その後に摘出手術が必要となった場合に、断脚だけは避けたいと願っております。
が、症状が進めば痛みも出るとのことですので犬もつらいと思いますし、そうなることが確実なのであれば断脚もやむを得ないのかなとも思い始めています。犬の年齢も含め、犬が苦しむことを一番に避けたいと思っています。
慢性腎臓病による全身麻酔のリスクはどのくらい高いのでしょうか。
最悪の場合にはやはり断脚しなければならないのでしょうか。
もしも断脚した場合、年齢・持病を考えて回復が見込めますでしょうか。
まだ事前の検査もしていないので究極の質問かもしれませんが、かかりつけの先生がおっしゃるからには、その可能性が高いものとも推察しております。
麻酔に耐えられるかどうかも大きな心配ですが、その後のことも考えると不安で仕方ありません。
どうか、どんなことでも構いませんので何か教えていただけたらと思います。
よろしくお願いいたします。
2020-12-22 12:55:56
専門の獣医師からの回答
脂肪細胞が腫瘍化したものには、脂肪腫、浸潤性脂肪腫、脂肪肉腫があり、脂肪腫、浸潤性脂肪腫は良性腫瘍、脂肪肉腫は悪性腫瘍に分類されています。脂肪腫と浸潤性脂肪腫の違いは、脂肪腫は被膜に包まれ、孤立性で境界明瞭であるのに対して、浸潤性脂肪腫は周辺組織に浸潤(浸み込んでいく)し、境界が不明瞭です(通常、転移することはありません)。この違いにより、脂肪腫は腫瘍塊のみを簡単に摘出することが可能ですが、浸潤性脂肪腫は周囲組織と共に切除する必要があり、取り残した場合は再発が避けられません。脂肪肉腫は悪性腫瘍で、浸潤性があり転移する場合もあります。浸潤性脂肪腫との鑑別は、細胞診で行いますが、まれに区別がつきにくい場合もあります。
今回は、浸潤性脂肪腫か脂肪肉腫が疑われるとのお話ですが、細胞診で区別がつかない場合は、CT検査が有用だと思われます。CT検査を行うことにより、転移の有無の確認や、具体的な手術方法を検討することが出来るかもしれません。検査には麻酔が必要ですが、慢性腎臓病のステージ2でしたら、麻酔前に十分な水和(脱水や電解質不均衡があれば、点滴により状態を改善させる)を行えば、腎臓病が悪化するリスクは少ないと思われます。ただ、全身麻酔のリスク判定は、腎蔵だけで行うものではありませんので、全身状態を把握した上で判断する必要があります。手術につきましては、根治を目指せるかどうかで術式が変わってくると思います。転移が無く、根治(完全に取り切れる)の可能性がある場合は、断脚を選択肢の一つとして考える場合もあります。断脚した後の予後につきましては、残った3本の足に問題がなければ歩行は可能だと思われますが、残った3本の足の内1本でも力が入りにくいような状態でしたら、歩行は難しいと思われます。既に転移が認められた場合は、根治が期待できませんので、手術適応外と判断するか、緩和的な手術(痛みを取ることを目的とした場合が対象)を実施するかの判断が必要となります。
送って頂いた文章の中に、7月に同部位に脂肪腫が認められていたとの記載がありますが、同じ腫瘍が大きくなった可能性は無いのでしょうか?細胞診の結果からは、脂肪肉腫の可能性は低いと考えられ、脂肪腫の可能性も完全には否定できないように思われます(脂肪腫の成長は通常は緩徐ですが、かなり大きくなる場合もあります。また、脂肪腫であれば断脚は回避できると思われます)。現状の検査結果だけでは、診断の確定は難しいと思われるため、手術の適否を判断するためにも、更なる検査が必要だと思われます。15歳という高齢犬の場合、飼い主様も獣医師も治療の選択に迷うことがありますので、飼い主様のご希望やご心配な点を獣医師にしっかりと伝えて、良く相談しながら進められることをお勧め致します。
2020-12-27 19:11:06
NAO(質問主)
お忙しい中、とても丁寧な、そしてわかりやすいご説明をいただきありがとうございます。
検査の必要性やその後について、とても理解することができました。全身麻酔での慢性腎臓病のリスクにつきましても、少し安心することができました。まずは検査について、勇気を出して前向きに検討したいと思います。
7月にあった脂肪腫についてですが、場所は同じところからお尻の方へと広がって大きくなっていて、触った感じが全体的に固くしっかりとした感じなのです。
脂肪腫であることを願いたいのですが、脂肪腫でも固くなる場合があるのでしょうか。
重ねての質問になってしまい恐縮ですが、ご返信をいただけると助かります。
よろしくお願いいたします。
2020-12-27 21:48:00
脂肪腫は基本的に柔らかい腫瘍ですが、大きくなった場合は、硬くなっても不思議ではない(一定の大きさの袋(被膜)の中で、腫瘍細胞が増殖して密度が高くなると硬度は上がる)と思います。
2020-12-28 23:06:05
NAO(質問主)
重ねての質問にご返信をいただき、ありがとうございます。
そうなんですね。脂肪腫でも硬くなることがあるのですね。八方塞がりの不安の中、1つの希望が見えた気がします。
かかりつけの先生にも、もっと希望や心配な点をきちんと伝えて相談しながら治療に向き合いたいと思います。
年末のお忙しい中、本当に丁寧にご回答をいただき、ありがとうございました。
2020-12-29 08:55:48
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