イヌ・ネコの健康医療相談

相談・獣医師回答・コメント

(質問主)


犬アイコン 犬 11歳 オス フレンチブルドック

体重:10.5kg

飼育歴:3年1ヶ月

居住地:北海道千歳市

飼育環境:室内

こんにちは。両耳の皮膚について相談です。
2015年12月に8歳で我が家に引き取った際、前の飼い主さんに「右耳が汚れており掃除をすると黒いものが出てくる」ことを伝えられました。
翌年6月、進行した外耳炎が左耳の鼓室胞周縁に炎症を起こし顔面麻痺となり、大学病院で垂直耳道切開手術を受けたことで、右耳の垂直耳道の皮膚がボコボコに隆起し、黒い垢のようなものがびっしりと付いていることがわかりました。少し香ばしいような嫌な臭いがあり、強い痒みがあるようで、時々必死に布団や床に耳を擦り付けていました。大学病院(受診していたのは腫瘍科)で尋ねたところ、治すのは難しいとのことで、痒みがひどい際に塗布する薬をいただきました。その後地元の病院でも尋ねましたが、同様の症状を見たことがないとのことで、その後は耳道の経過観察や膀胱炎で頻繁に通院しつつも、耳の皮膚については放置しておりました。
2018年7月に同じ症状が左耳に現れ、2〜3週間ほどで右耳と相違ないほど症状が悪化しました。さらに右耳よりも痒いようで、朝晩に息が切れるほど布団に擦り付けるため(ちなみに2018年3月に膿皮症を発症し、獣医さんに痒いはずだと言われましたが、膿皮症を痒がる様子は全く見せないため、耳の痒みの方が始終上回っているように思っています)、別の病院で診察を受けました。そこで、皮膚を擦りすぎない範囲で出来るだけ汚れを落とすことと、オイルの塗布を勧められ、週一のシャンプーとそれ以外のシャワーでの水洗い、そしてオイルの塗布で汚れはかなり改善され、時々耳を擦り付けるものの、以前のように必死に掻き毟ることはなくなりました。
ご相談したいのは、この耳の皮膚炎が何かということです。菌の特定や治療は難しくても、どんな原因でこういったことが起こり得るのか、皮膚の隆起はどういう症状なのか(皮膚の炎症?)、黒い垢のようなものは何であると考えられるのか(老廃物を常在菌か何かの細菌が分解したもの?)など、可能性として挙げられるヒントのようなものをいただければと思います。また、完治は難しくても、皮膚科に強い病院で細菌検査などをする価値がありそうかどうかも、お考えをお聞かせいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いします。

日時2019-01-05 23:04:14

専門の獣医師からの回答

初期の原因は外耳道や耳孔入り口の皮膚の炎症であることが一般的です。外耳炎、外耳道炎を起こす要因の一に、アレルギー性皮膚炎があります。
フレンチブルドックは膿皮症やアレルギー性皮膚炎を発症することが多い傾向があります。また、他の犬種に比較して耳道が細い、といわれています。この様なことがフレンチブルドックに耳道の疾患が生じ易く、さらには慢性化や悪化し易いことと関連しているのではないかと推測されています。
耳道と耳道入り口の隆起物は、耳垢腺(脂分の分泌腺)の過形成を伴って皮膚が顕著に肥厚した部分に、炎症性のポリープが多発性に形成されているように見受けられます。局所の炎症刺激が持続するなかで、今後耳垢腺癌が生じる可能性もありますので注意して経過観察されることをお勧め致します。
黒いベタベタした耳垢のようなものは、おそらく耳垢腺の分泌物と脱落した表皮の細胞に、局所で増殖した細菌やマラセチア(酵母菌の一種)が混じったもの、と思われます。
耳道や耳道入り口の皮膚が炎症を起こす→脂分の分泌が亢進し、炎症による滲出物も増加→耳垢腺の過形成と皮膚の肥厚により耳道が狭くなり、湿潤した不潔な環境になるためマラセチアや細菌がさらに繁殖し易くなる。→マラセチアの代謝産物や細菌による刺激が耳道の炎症をさらに悪化させ、慢性化する。→悪循環による慢性経過のなかで、炎症性ポリープが発生するなどして、いよいよ耳道が狭窄する。この頃から、垂直耳道の軟骨も厚みを増して硬くなり、耳道の狭窄がさらに進行して耳鏡で鼓膜を観察することが出来なくなる。→完全に耳道が閉塞する。     といった経過が推測されます。
積極的な治療としては、耳道入り口から垂直耳道と水平耳道を含む「全耳道切除術」があります。 鼻梁部が長い普通の犬種に比べ、フレンチブルドックのオスは手術部位が深く、また慢性化した耳道軟骨周囲の組織が硬くなっていて顔面神経の損傷を避けて完全切除することに困難を伴うことがあります。
内科的な管理には限界がありますが、現在実施しておられるようにシャンプーやシャワーで汚れを取り除き、皮膚のケアをしてあげることは大切です。
少し痒みの症状が改善しているとのことですので、上手に管理できていると思われます。
細菌検査は、現在の患部の細菌学的な環境を理解し、感受性のある薬剤を選択するうえで有意義と考えますが、薬剤耐性の変化や菌の交代が生じますので、今後も適宜繰り返して検査を実施する必要があるでしょう。完治は難しいため、薬剤を長期に使用することになると思われます。薬剤の選択と使用方法は獣医師の指示に従われることをお勧め致します。
どうぞお大事になさって下さい。

日時2019-01-12 17:18:56

(質問主)


 丁寧なお返事をくださり、ありがとうございます。ずっと知りたかった皮膚の隆起の仕組み(肥厚に加えて炎症性のポリープが多発性に形成されている可能性)や、耳垢(水よりもオイルの方がずっとよく落ちるので、ご説明に納得しました)が生成する原因と思われるものがわかり、胸のつかえが取れました。

 2016年に鼓室胞内に何か貯まり(本来空気であるはずが液体が映るので血液か膿ではないかとのことでした)、周縁の炎症が脳に影響を及ぼしているとのことで手術をすることになった際、全耳道切除術か垂直耳道切開かの選択肢がありました。その時点ですでに両耳の鼓膜を失っており、左顔面〜左耳にかけての麻痺も出ていましたが、医師の勧めもあって垂直耳道切開を選びました。

 その後、耳に関しては全身麻酔下で数回洗浄していただき、今は病院で作っていただいたシリンジにチューブを繋げたものを使い、自宅で毎日洗浄しています。自宅洗浄を続けて1年後に耳道内を診ていただいたところ、やや汚れはあるものの状況は良好とのことで、ここ2年ほどは自宅洗浄のみで特に症状もなく落ち着いています。ただ、今も鼓室胞に爆弾を抱えているとの認識を持ち、注意を払うようにしています。

 上記の手術後、3種類の抗生物質をローテーションさせながら1年間服用しました。2017年秋からからは膀胱炎が頻発し、その度に抗生物質を飲んでいますが(今も服用中です)、再び内耳で命に関わる問題が起きた時のために、抗生物質の服用は最小限に留めたいと思っています。今回耳の皮膚に関して、やはり完治は難しいと思われること、そして薬剤の長期使用が必要になるだろうとの見解をいただきましたので、症状が落ち着いている間は積極的な治療をせず、洗浄(先週からアルコール消毒も加えました)とオイルの塗布を続けて、耳垢腺癌の可能性を意識しながら注意深く様子を見ていこうと思います。

 地元の病院でも今回のような説明をお聞きできればいいのですが、飼い主にもわかりやすく説明しようとすることで詳細が省かれ、曖昧で短い説明で終了してしまうことが多々あります。このような場があるとても助かりますし、先生の説明もとてもわかりやすくて感激しました。質問して本当によかったです!ありがとうございました!!

日時2019-01-13 21:00:51

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