相談・獣医師回答・コメント

血尿の原因は様々ですが、通常は膀胱炎による膀胱からの出血であることが一般的です。また、膀胱炎の原因にも幾つかありますが、猫において最も多いのはご承知のように膀胱に結石や結晶が出来、それが刺激になって炎症や細菌感染を起こすものです。
結石・結晶の予防のため食餌に注意しておられるとのこと。
尿の細菌培養で細菌が培養されなかったにもかかわらず、抗生物質を投与すると血尿が止まり、中止すると再発するとのこと。
抗生物質の投与中は尿の細菌培養で細菌の発育が見られないことがありますが、尿沈渣の顕微鏡検査でも細菌が観察されなかったのであれば、その時点で細菌が関与していた可能性は低いことが推測されます。
また、エコー検査で異常なし（結石や、明らかな結晶の沈殿がない）とのことなので、おそらく問題ないのでしょうが、膀胱結石が難治性の膀胱炎の原因になっていることは珍しくありませんので注意が必要です。エコーで確認できない結石がレントゲンで見つかることも稀にあります。
ご愛猫の場合、避妊手術時にも確認して頂かれている様なので、大丈夫と思われます。

さて、細菌感染も結石や結晶もないのに膀胱炎が治らない原因をあえて挙げるとすると、「猫の特発性膀胱炎：FIC」の可能性があるかも知れません。FICは尿検査や尿の培養検査、エコーやレントゲンなどの画像検査といった詳しい検査で除外診断されてもなお原因が特定できない場合に診断されるものです。正確な原因は不明ですが、若齢から中年齢の猫にみられ、一般的には3～7日程度で症状が改善しますが、多くは1年以内に再発するといわれています。もしもFICであれば完治は難しいのですが、発症の頻度と程度を軽くするために、
１） 環境の改善によってストレスを減らせる（猫が安心しリラックスして生活できる環境を整える）、
２） 水分の摂取量を増やすため、水を入れた食器の場所を増やしたり、フードをドライタイプから尿路疾患用のウエットタイプのものに変更する。
３） ω3脂肪酸やビタミンEおよびβカロテンなどの抗酸化作用のある成分がフードに入っていると効果がある可能性があります。

ご愛猫にFICが疑われるかどうかの判断には、掛かりつけ医の評価が大切です。

稀ですが、持続的に尿に血が混じり、抗生物質に反応せず、膀胱や尿道にも異常がない場合、腎臓からの出血によることがあります。このことを確認するには、詳細な腎臓のエコー検査と、膀胱穿刺による採尿（これは一般的に実施されるものです）、および造影CT検査が必要なことがあります。
沢山書かせていただきましたが、折角これまで頑張っておられますので、もう少し掛かりつけ医と相談されながら頑張ってみられては如何でしょうか。
泌尿器を得意とする施設での検査が必要ないか、についても掛かりつけ医と相談できると良いですね。
どうぞお大事になさって下さい。