猫エイズキャリアのメス猫です 発症確率や平均寿命が知りたい
飼い主からの相談に専門の獣医師が回答します
みずたま(質問主)
猫 3歳 メス 雑種
体重:4kg
飼育歴:0年0ヶ月
居住地:北海道札幌市中央区
飼育環境:室内
今月から、猫エイズキャリアで、発症はしていない3歳4ヶ月(推定)の雌猫を飼い始めました。
元野良猫で、ボランティア団体に保護された猫です。
この度、3点質問させて頂きたいです。
①猫エイズ陽性の猫が、発症をせずに寿命を全うできる確率はどれ位なのでしょうか?
②似たような質問ですが、発症してしまう確率はどれ位なのでしょうか?
③猫エイズキャリアの子たちの平均寿命を教えていただきたいです。
個体差がある事、明確な数字を一概に言えないであろう事は、承知しております。
ただ、今までの経験などから答えていただけると、とても助かります。
お忙しいところ恐れ入りますが、どうかご回答いただければと思います。
よろしくお願いいたします。
2018-11-18 16:42:00
専門の獣医師からの回答
猫の免疫不全ウイルス感染症(猫のエイズまたはFIV感染症)につきましては、長期の生存率や平均生存期間などの正式なデータがありませんので、残念ながら3点のご質問について具体的にお答えすることは難しいのですが、以下に2012年と2015年の論文の概要をご紹介させていただきますので、参考になさって下さい
*適切に飼育管理されれば、FIV感染猫であっても、何年も生きることが出来、老齢になってFIVと直接関連のない疾患によって死亡することがある。
*FIV感染猫を2年間追跡調査した報告では、その間の病気の進行はさまざまで、調査開始から2年以内に18%の猫が亡くなっています。亡くなった猫はFIV感染からおよそ5年経過していたと推測されています。残る82%のうち18%の猫は徐々に病気が進行しましたが、50%以上の猫は2年間の調査期間中無症状でした。全体の生存期間は非感染猫に比べて短いものの、生活の質は良好でした。
*FIV感染試験では、ヒトと異なり猫の場合には急性期、無症候期、終末期(エイズ期)に相当するステージは明らかでなく、いわゆるエイズ期であっても回復する猫がいます。
*FIV感染猫は、通常進行したステージでは免疫機能が低下し、二次感染を起こし易くなります。826頭のFIV感染猫の調査では、口内炎、腫瘍、目の疾患(ブドウ膜炎、脈絡網膜炎)、貧血、白血球減少症、日和見感染症、腎炎、下部尿路疾患、などがみられています。
このように、FIV感染猫の主要な疾患は、感染症と腫瘍性疾患、といった二次的な疾患による症状です。
別の報告では、2頭以下の頭数で一般家庭に飼育されている17頭の猫では、22ヶ月間の観察期間中全て無症状でしたが、60頭以上の猫が集団飼育されている環境では27頭中17頭(63%)の猫が22ヶ月の観察期間中にリンパ腫などによって亡くなっています、
以上のように、適切な管理によって、FIV感染猫は何年も生存し、実際のところ年老いてからFIV感染と関連性のない理由でなくなる事が少なくありません。
私の診療現場でも、10歳を越えた猫が初めてFIVの検査を受けて、陽性と解ることがあります。飼い主様は仔猫のときから飼育しているので途中で感染したことは考え難いと仰られますが、本当に何時感染したかが不明なことが多いため、結果としてFIV自然感染猫の寿命についてのデータが集まりにくいと思われます。
どうぞ屋内で大切に飼育してあげてください。無症状で長生きできることを願っています。
2018-11-25 21:56:30
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