犬の尾に肥満細胞腫ができました。検査方法や断尾の必要性を知りたいです
飼い主からの相談に専門の獣医師が回答します
TUKO(質問主)
犬 11歳 メス 雑種
体重:21kg
飼育歴:9年6ヶ月
居住地:東京都北区
飼育環境:室内
肥満細胞腫の治療についてご相談致します。
よろしくお願いいたします。
メスの雑種犬(推定11歳)です。
既往症としては
膵がい分泌不全でパンクレザイムを
胆嚢炎でウルソを服用しています。
尻尾にしこりが出来(付け根から11㎝位の位置、径1㎝程)、針生検で肥満細胞腫と診断されました。
切除の充分なマージンが取れない為、抗がん剤で小さくしてから手術すると言われ、6月30日よりイマチニブを服用し始めました。今のところ副作用らしいものは出ていません。
私としては、断尾した方が安心出来る様に思うのですが、組織検査での確定診断が出来ないのに、断尾はリスキーだと言われました。
他の先生のお考えを伺いたく思っています。
また、内臓転移などの心配はあるでしょうか?
治療や手術に伴う検査として、通常どの様な検査が(例えばCTとか)必要かもお伺いしたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
2017-07-06 16:08:23
専門の獣医師からの回答
尻尾に直径1cmほどの肥満細胞腫がみつかり、イマチニブの投与を開始。腫瘍の縮小を得てからマージンをとって切除予定、とのことですので、肥満細胞腫を前提に回答させて頂きます。
選択肢として十分に考えられる治療方針です。たた、腫瘍が小さくなっても消失してはいませんので、切除の際には十分なマージンを確保して切除することが大切です。主治医の先生は、ご愛犬の尻尾の太さから腫瘍がもう少し小さくなれば断尾せずに切除することが容易になると判断しておられるのではないでしょうか。または尻尾が無くなるのは可哀相なので出来れば断尾を避けたいと考えておられるのかも知れません。あるいは、断尾後に病理検査の結果が肥満細胞腫でなかった、というリスクを案じておられるのかも知れません。
ご愛犬の現在の健康状態を具体的に把握出来ていませんので、以下は私の治療方針の一つのパターンであることをご理解のうえ参考にして頂ければ幸いです。現在気掛かりな点については是非とも改めて主治医によくご相談されることをお勧め致します。
1) 肥満細胞腫は、外科切除が可能であればマージンを確保して切除します。尻尾はマージンを確保し難い部位ですので、切除縁に腫瘍細胞を取り残さないように注意します。従って、飼い主様の理解が得られ、麻酔や手術に耐えられる状態であれば、十分なマージンを確保して切除するために断尾という選択肢も有ると思われます。
2) 切除した組織は病理検査をして、グレード分類(出来れば有糸分裂指数も評価)します。グレードはその後の追加治療を検討する際の参考となります。切除材料の病理検査の際に、追加費用が掛かりますが検査の依頼先によってはc-kit遺伝子の変異の有無を調べることも可能です。この遺伝子に変異がある場合は、無い場合に比べてイマチニブやトセラニブの投与に対する反応が良いとされています。
3) 肥満細胞腫の場合、内臓への転移で注意する部位は脾臓、肝臓および内臓のリンパ節で、肺への転移は希といわれています。
4) 治療や手術の際の検査としては、通常の血液検査以外に腹部レントゲン検査と腹部エコー検査で転移を疑う所見が無いかを確認しておくと良いでしょう。CT検査・造影CT検査は、麻酔が必要であり、費用の問題がありますが、レントゲンやエコーで検出し難い腹腔内リンパ節の確認や、脾臓と肝臓などへの転移を示唆する所見が無いか確認出来るメリットがあります。
外科切除後は定期的な経過のチェックだけで良さそうか、切除組織の病理検査で辺縁に腫瘍細胞が認められた場合に再切除や放射線治療を追加するのか、化学療法は必要か、など今後の経過や検査結果をみながら主治医と相談して治療を進めてゆく必要があります。それでは、主治医と飼い主様の二人三脚によって、ご愛犬が肥満細胞腫を克服されることをご祈念申し上げます。
2017-07-11 23:30:00
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