子犬の中でも最強クラスのポメラニアン　信じてぶれない飼い主と最高の相棒に

　ご近所迷惑になりそうなほどにほえまくり、家族の腕が流血沙汰になるほどかみまくる。ＵＧ ＤＯＧＳアトラスタワー中目黒店（以下ＵＧ）ではおなじみの「ハイパーポメラニアン」が新年早々やってきた！　でも、飼い主はあまり深刻にはとらえていなかったようで……。

　激アツ店長こと高橋信行さん、中目黒の駅前で叫ぶ！

「愛犬を信じる力、ブレない強さは正義！」

（前回のお話はこちら）

（末尾に写真特集があります）

そんなに大変な子だったの？

　2023年を迎えてすぐ、高橋店長のカウンセリングを受けるため中目黒に向かったポメラニアンのりくくんとお母さん。バッグに入れて電車に乗ると、りくくんは最寄駅からずーっとほえ続け、近くにいた男性から「うるさい！」と注意されてしまう。電車を降り、タクシーに乗り換えてＵＧへ。

　そんな暴れん坊のりくくんにもかかわらず、「お泊まりになるほどではないかな、と。カウンセリングだけで終わると思っていました」とお母さん。が、店長は「新年早々、激強スーパーハイパーポメの登場にお正月気分が一気に吹き飛びました」と笑い、こう続ける。

「お母さんはあまり気にしていないようでしたが、手や腕は柴犬にかまれた？と見まごうほどズタズタでした。月齢４カ月とまだ子犬ではあるものの、１週間では難しいかもしれない。時間をかけてトレーニングしてくれる先輩トレーナーを紹介したいと伝えました」

　その言葉にお母さんはびっくり！　「りくはそんなに大変な子なの！？と」。店長はこう語る。

「あんなにかんでギャンぼえする子犬は、『飼いきれない』と飼育放棄されてもおかしくない。そこまでいかなくても、家族を育犬ノイローゼに陥らせるほどのレベルです。でも、りくくんのお母さんはメンタルが強く、いい意味で深刻に思い詰めていなかった。何より、りくくんのことを『問題犬なのでは？』などとうたぐっていなかった。実はそれはとても大事なこと。愛犬を信じていないご家族はその意識を変えるところから始めなければなりません。その点、お母さんはりくくんを信じていたし、何より前向きだった。

　とはいえ、お母さんもやるべきことをやっていないし、りくくんはＵＧに来る子犬の中でも最強クラスなので、きっと時間はかかる。でも一緒にがんばりましょう！　と」

　こうしてりくくんの１週間の社会化お泊まりがスタートした。

本能のままに暴走

　ＵＧの群れに放つと、りくくんは先輩犬にほえてほえてほえまくる。店長の愛犬で群れのリーダー、ジャックラッセルテリアのロイスにまでケンカを売る始末。

「やさしいお母さんに甘えてわがまま王子になり、他者に合わせるつもりがない。で、先輩にからみまくって吹っ飛ばされ、『わーん、叱られた〜助けて〜』と僕のところに逃げてくる（笑）。でも昼寝すると叱られたことも忘れちゃうのか、また先輩に向かって『ボクと遊べ！』とけたたましくほえ……。それを繰り返していました」と店長は振り返る。

　さらに閉店後はケージの中でほえまくる。触られるのが苦手で、リードをつけたりブラッシングをしたりしようとするとブチ切れる。お散歩は意識があっちゃこっちゃに行ってしまい真っ直ぐ歩けない。ごはんの用意をすれば、フセ、マテができないどころかフードボウルに向かって飛びついてくる……。

「本能のままに生きる野生動物のようでしたね」と店長は笑い、こう続ける。

「僕が注意すると、りくくんは『は？』と驚いた表情をして動きが止まる。おそらくお母さんが動画配信などのほめるトレーニングを参考にしてきたため、叱られた経験がなかったのでしょう。でも、頭がいいので注意すれば一瞬正気に戻る。りくくんもそうですが、ＵＧに来る強い子犬に叱らずやさしく言って聞かせる、なんてやっていたら、あっという間に手に負えなくなる。伝えるべきことは遠慮せずきちんと伝えればいいんです。だってりくくんは強いし、言えばわかる子なんだから」

　日々を過ごす中で、お散歩ではまっすぐ歩けるようになり、首輪をつけたりブラッシングをしたりはクリアできた。が、ほかの犬に対しては相変わらず好戦的で上手に遊ぶことができない。また、ごはんを前にすると興奮してフセ、マテができないなど一筋縄ではいかず、お泊まりはさらに１週間延長することに。その甲斐があり、ほかの犬にケンカを売るのではなく「遊ぼう！」と誘えるように。一進一退ではあったが少しずつ成長の兆しが見えてきた。

再び散歩をボイコット…

　そしてお迎えの日。近くの目黒川沿いにお散歩練習に行くと、お母さんがリードを持ってもりくくんは真っ直ぐ歩くことができた。「こんなに普通に歩けるなんて……。感激しました」とホッと胸をなでおろすお母さんに、しかし、店長は釘を刺す。

「家に帰るとしばらくは良くても、りくくんは仕掛けてくると思います。お散歩を頑張ること、ごはんの前はフセ、マテをすること、フリーにばかりせずハウストレーニングをすること。この基本を徹底してもらった上で、アフターケアにこまめに通ってほしい」

　店長の言葉どおり、帰宅後３日間、りくくんはお母さんが拍子抜けするぐらいお散歩で上手に歩いた。が、４日目。座り込みお散歩をボイコットし、それから歩かなくなった。

「体力がないんですかね？　と店長に相談したら、『なワケない！』と秒でツッコまれました（笑）」とお母さん。そして、店長からは「お母さんの遠慮がりくくんに伝わり、またわがまま王子に戻っただけ。家族なんだから遠慮する必要はありません。ダメなことはダメ、イヤなことはイヤときちんと伝え、関係性をきちんと築いていくこと！」とゲキが飛んだ。

　人間もそうだが、１対１だとわがままになったり関係性が煮詰まってしまったりする。りくくんは毎週ＵＧにアフターケアに通って世界を広げ、お母さんもりくくんとの距離感や関係性をその都度見つめ直していった。その上で、一緒にいるときに心がけたのは「シンプルに暮らすこと」。

「お散歩、ごはんの前のフセマテ、ハウストレーニング。店長からアドバイスされたこの３つにしっかりと取り組みました」とお母さん。すると、興奮きっかけのギャンぼえは減り、ごはんへの執着もフセ、マテを徹底したことで落ち着くように。激変することはなかったが、少しずつ、毎日ほんの少しずつ、りくくんは変化していった。

最高の相棒！

　ところが月齢８カ月で受けた去勢手術をきっかけに、りくくんは体調を崩してしまう。アレルギーが発症したのか自分の手脚や尻尾をなめこわし、自慢のふわふわの毛がどんどん抜けていった。食欲は旺盛なのに食べると下痢をしてしまい、「一時期は何を食べてもおなかをこわし、フード迷子になってしまいました」とお母さん。

　人間だってかゆい、おなかの具合が悪ければイラ立つもの。なめないように付けたエリザベスカラーの煩わしさと、自我が目覚めた反抗期も重なり、りくくんは荒れた。

「この時期が本当にきつかった。私も、りくも」とお母さん。健康面でも店長に相談し、ようやくりくくんに合うフードにたどり着いた。かゆみも減り、被毛もほぼ元通りに。体調が安定し、お母さんとりくくんに笑顔が戻った。

「１歳を過ぎたころからは、りくが何を考えているのかがわかるようになりました。りくも私が外出するときには自らハウスに入ったり、静かにしていなければいけない状況ではおとなしくできたり。かまれることもほとんどなくなり、気づいたら特大の消毒液を買う必要もなくなっていました（笑）」

　アウトドアレジャーが大好きというお母さん。海でも山でも川でもりくくんを連れ立ち、一緒に大自然を満喫しているという。「泳ぐのが得意で、車中泊もへっちゃら。強くてかわいくて、りくは最高の相棒です！」

　店長は「りくくんも強いですが、お母さんも最強！」と笑い、こう続ける。

「りくくんを信じる気持ち、そして僕らＵＧのスタッフを信じてくれる気持ちがとても強く、ブレがなかった。そんなお母さんだから、りくくんも心から頼りにするようになったのだ、と。犬だけでなく、人間も『強さは正義！』なのです」

高橋信行店長　プロフィール

物心がつく頃から動物関係の仕事に就きたいと考え、動物系の専門学校を卒業後、ペットショップに就職。いくつかの転職を経て、現在はUG DOGSアトラスタワー中目黒店店長。これまでカウンセリングは1300件以上、お泊まりで預かった犬は1000匹を超える。愛犬は、ジャック・ラッセル・テリア「ロイス」。

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