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保護猫を迎えたい! どう探して、どこから迎える? 信頼できる保護団体探しがカギ

 7回にわたって「保護猫の迎え方」を紹介する当連載。第2回は、保護猫をどのように探して、どこから迎えればいいのか、について取り上げます。猫との幸せな暮らしを実現するためには、信頼できる保護団体を見つけることがカギになってきます。

保護猫はどこから迎える?

 現在の日本では、保護猫をどこから迎えるかの選択肢は主に4つ。「動物保護団体」、「動物愛護センターなどの行政施設」、知人やSNSなどを通した「個人間での譲渡」、そして最後に、自分で拾ったり保護したりする方法です。

動物保護団体

 動物保護団体とは、動物愛護センターなどの行政施設、ブリーダー崩壊や多頭飼育崩壊の現場、野良猫などを保護し、新しい飼い主に譲渡していく活動をしている団体のこと。非営利で、公益性のある活動として行っています。「特定非営利活動法人(NPO法人)」が名称につく団体は、特定非営利活動促進法に基づき、法人格の付与を受け、法人として運営を行っています。NPO法人であることは、明確な会計処理が行われているなど信頼の部分をはかるひとつの判断基準となります。 さらにNPO法人の中には、各都道府県の所轄庁から、「認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)」の認定を受けている団体があります。認定NPO法人は寄付控除による税制優遇措置が受けられるようになるメリットがあり、同時に、運営組織や事業活動が適正で、公益の増進に寄与する団体として一定の基準を満たしていることも意味しています。

(アニマルレフュージ関西提供)

 もちろん、法人でなくともしっかりとした保護団体、保護団体と同様の保護活動に邁進(まいしん)する個人も存在しています。どんな猫がいるか、譲渡条件、活動地域なども含め、さまざまな動物保護団体が存在するため、まずは団体選びがポイントになってきます。

動物愛護センターなどの行政施設

 動物愛護センターなどの行政施設は、環境省の定める動物愛護管理基本指針の考え方 に基づき、都道府県に設置されています。

 行政施設の規模は地域によってさまざまですが、主には伴侶動物の引き取りや捕獲(保護)、動物愛護の啓発活動などを行っています。捕獲収容された動物を可能な限り譲渡することを目指し、見学会や譲渡会、譲渡前講習会などを行っている動物愛護センターなどもあります。まずは住んでいる地域にある、動物愛護センターなどの行政施設の取り組みをチェックしてみるといいでしょう。

個人間の譲渡

 個人間の譲渡は、家族が猫アレルギーになった、引っ越しや離婚で環境が変わった、飼い主が病気になってしまったなど、何らかの事情で猫を飼えなくなった飼い主自らや家族や友人などが、新しい飼い主を募集するケースです。SNSや地域のコミュニティーサイトなどで、そうした募集はしばしば確認できます。手放す人と引き取る人の間で交渉が成立すれば譲渡を受けられますが、個人間の交渉は明確なルールがないためトラブルになりやすく、またトラブルになった場合に自分たちで解決しなければいけないというリスクがあります。

自分で拾うか保護する

 猫に関してしばしば起こるのが、捨てられた子猫や野良の子猫を拾ったり、野良猫が自宅の敷地で子猫を産んでしまったりするケース。また、野良猫を保護して自宅で世話してあげたいと思う人もいるかもしれません。

 拾ったり保護したりする際にまずチェックしたいのが、他の人の飼い猫ではないかどうか。首輪や迷子札をつけていないか、迷子として捜索されていないか、またマイクロチップが入っていないかを病院などで確認しましょう。耳先がV字にカットされている場合は、ボランティアが不妊・去勢をして世話している地域猫の可能性が高いです。保護しても大丈夫か、世話しているボランティアに相談しましょう。

おすすめの迎え先は、信頼できる保護団体

 もっともおすすめなのは、信頼できる保護団体を見つけて、そこと相談しながら自分たち家族に合う猫を探し、迎える方法です。

 優良な保護団体は、その猫と家族の5年後、10年後の生活も考えています。保護猫を探すときにはプロの視点で合う子をマッチングしてくれたり、迎えた後にも困ったことがあったら相談にのってくれたりと、家族の強い味方になってくれます。これは、その猫と家族だけでなく、社会全体で幸せな猫と家族を増やすことを考えて活動しているからです。

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 猫好きなら、社会に幸せな猫が増えることを望む人がほとんどでしょう。より多くの猫が幸せになるためには、目の前の行き場のない猫のことだけでなく、社会全体を見て、その構造的な問題を解決することが必要です。保護猫を迎えようと思ったとき、優良な保護団体の活動に賛同し、そこから保護猫を引き取ることは、未来に向けた大きな力になります。

信頼できる保護団体の探し方

 では、実際に信頼できる保護団体はどう探していくか、その手順とポイントを紹介します。

アクセス可能圏内にある団体を探す

 保護団体について何も手がかりがない場合は、まずは「猫 保護団体 ●●県(居住エリア)」の検索ワードを使い、自宅の近くにある保護団体を探してみましょう。猫を迎えるには、保護施設を訪れ、実際にその猫や飼育環境を見ておくことが大切です。そのことを見据え、アクセスが可能な範囲から探していくというのは有効です。

メディアなどを参考にして探す

 なかなか目ぼしい団体や猫が見つけられないとなったら、保護猫の問題と向き合う大手メディアや、大手寄付サイトをチェックし、そこで紹介されている保護団体を見てみるのも一案です。これらは紹介する保護団体についてしっかり調査をしていることが多く、信頼できる保護団体を探す一つの目安となります。ただし、保護活動はとてもハードなだけに、団体の活動や組織の在り方が安定せず、流動的となることも多いです。古い情報ではなく最新の情報を見るようにしましょう。

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飼い主募集サイトから探す

 その他、全国各所にいる保護猫がまとめて掲載された飼い主募集サイトを見て探していく方法もあります。著名なサイトには、保護団体や動物愛護センター、個人など、さまざまなところにいる保護猫の情報が集まっています。今どんな保護猫たちがいるのか、また一般的な譲渡条件など、保護猫事情の全体像をつかむことができます。そこで気になる猫がいたら、その子の情報を掲載している大元となる保護団体の、ホームページやSNSなどをチェックしてみましょう。

必ずチェックしたいこと

 個人間取引や捨て猫を拾ったなどでない限り、保護猫探しの過程では、必ず保護主にたどり着くはずです。そこで必ず確認してほしいのが、「保護猫の個体情報をホームページなどに載せている、もしくは問い合わせれば開示してくれるかどうか」です。保護団体はもちろん、保護主が個人であっても、かならずこの点は確認してください。

(アニマルレフュージ関西のホームページより)

 保護された経緯や(推定)年齢、性別、サイズ、性格、病気の有無・既往歴、避妊・去勢やワクチン接種状況などは、迎えるうえで重要な情報です。

 これらの情報をきちんと整理し開示している・してくれるかどうかを見ることで、1匹1匹の保護猫の管理や譲渡を、その保護団体がしっかり行っているかどうかが見えてきます。同時に、何も知らされず、いざ迎えてみたら生涯にわたって治療が必要な疾患を抱えていたなど、想定外の事態を回避することにもなります。

注意したい保護団体

 昨今、保護団体の中に積極的な取引や転売を行う自称保護団体ともいえる団体が見られるようになってきました。飼えなくなった家庭の純血種を積極的に引き取り転売したり、ペットショップと連携して売れ残った子を保護猫として販売したりする団体です。保護猫を利用した営利活動に加担してしまわない知識と知恵を持っておくことはとても大切です。

高額な金銭の要求がある

 譲渡の際に支払う金額は、医療費などの実費として、2〜5万円程度が相場です。それ以上の金額を請求してくるようなら、保護団体を語る営利団体の可能性があります。協力金や寄付金の請求、ペット保険への加入、フードや飼育用品の購入が譲渡に付随するような場合も、注意してください。

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 また、繁殖業者やペットショップと組んで、繁殖引退猫や疾患・障害のある子猫、売れ残った猫を保護猫として譲渡している団体もあります。行き場のない猫を救うという意味では同じと思うかもしれませんが、これらの団体の活動に協力し譲渡を受けることは、結果的に現在の問題ある繁殖流通販売システムを温存することに加担してしまいます。人気の純血種ばかりを集め、「ペットショップで買うよりは安いけれど、保護猫としてはそれなりに高額」な価格を提示している団体にも注意しましょう。

保護猫のQOLが保てていない

 保護団体の規模に対して、適正な数の動物を引き取り、快適な環境で世話をし、適正な数を譲渡する、健全な運営を行っているかどうかも重要なポイントです。

 一匹でも多くの猫を救い、一匹でも多くの猫を譲渡する。素晴らしいことのように聞こえますが、安易な譲渡はミスマッチを生み、猫と家族が大変な思いをした末に、再度保護猫になる二次レスキューへとつながってしまうこともあります 。

 また、保護猫にもQOLは大切であるという観点からも、救いたい一心とはいえ無理な保護活動を続けた結果、再び猫を不幸にしてしまうといった事態に陥ることは避けなければなりません。実際、動物愛護センターから犬・猫を多数引き出して保護していた団体が、劣悪な環境で動物たちを飼育して、犬や猫が団体から大量レスキューされるという「保護団体崩壊」も起こっています。 保護活動は持続可能なものでなければいけないという視点は、保護猫を迎えたいと考える人にも必要です。

 保護猫の飼育状況を知るためには、「実際に見に行く」ことが欠かせません。オンライン上だけで決めてしまわず、猫を迎える前には必ず保護団体の施設を訪問するようにします。実際に訪れ、猫たちのQOLが保たれているかどうか、自分の目でチェックするようにしましょう。

●監修=奥田昌寿(認定特定非営利活動法人 アニマルレフュージ関西
(取材・文/山賀沙耶)

次回は、「迎える前に、保護猫に会いに行こう」をお送りします。

(次回は11月3日公開予定です)

sippo
sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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この連載について
保護猫の迎え方
日本には、さまざまな事情から保護された行き場のない猫たちがいます。猫を家族に迎えたいと思ったら、選択肢に保護猫も入れてみませんか?当連載では、7回にわたって保護猫の迎え方を詳しく紹介していきます。
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