地域のアイドル猫の「茶太郎」。8月に保護し、家猫となった(伊東さん提供)
地域のアイドル猫の「茶太郎」。8月に保護し、家猫となった(伊東さん提供)

「新生活も気に入っている」 地域のアイドル猫が家猫に、4匹の共同生活はにぎやか

 東京都足立区に住む伊東さんは8月下旬、地域のアイドルだった茶太郎(オス、推定5歳)を「健康が心配だから」と家猫として迎え入れた。「アイドル猫」だったことから、9月上旬の間は自宅前に張り紙をし、茶太郎を心配するご近所さんに保護したことを知らせた。現在、茶太郎は先住猫3匹との距離を詰めている段階である。生い立ちもバラバラの4兄妹のライフストーリーとは?

(末尾に写真特集があります)

千太郎は緑内障で左目を摘出したが活発

 長男猫はキジ白の千太郎(オス、6歳)という。伊東さんは30年前に結婚して以来、猫との生活を願ってきたが、夫は動物が苦手。結婚25年目にして夫を保護猫の譲渡会に連れ出した。個人ボランティアグループ「ねこざんまい」が都内で開いていた定期的な譲渡会に行った際には、「ダメ元でいいから1度、猫と会ってみてほしい」という思いだった。

「譲渡会で夫は、幼児言葉で猫に語りかける人たちに引き気味でした。ケージを遠巻きにながめていたので『気になる子、いる?』と聞くと、『あの子がチョロチョロして気になる』と。それが、障害のある猫を集めたブースにいた千太郎との出会いでした」

 千太郎は高齢の飼い主が亡くなり、多頭飼育のまま放置され、2週間後に助けられた保護猫だった。救済されるまでの間に亡くなった猫もおり、左目が緑内障になったけれど生き残っていた。飢えた体験がトラウマとなったのか、スイッチが入ると何でも食べてしまう。しかし、人懐っこい猫だ。

人懐っこい千太郎(伊東さん提供)

「ファミリーで保護され、母親の名前は千姫でした。ボランティアの方は母猫と同じ“千”を付けた仮の名前の『千太郎』で呼んでおり、家族がいた記憶を名前に留めてやりたかったので、そのまま命名しました。夫は千太郎との縁を「運命の出会い」と言い、溺愛(できあい)していて腕枕でいつも一緒に寝ています。千太郎は誰にでもフレンドリーで愛想よく、来客が帰った後はサービスしすぎるのか電池切れになります」

 当初、獣医師から「光が見えているかもしれないから様子を見よう」と言われたが、回復の兆しがなかったことから、引き取って1年ほどで眼球を取り除く手術を受けた。千太郎は術後の方が活発に動いている。高い所に跳び移ることができないので、抱っこされると「(高い所に)乗せて」とアピールする。伊東さんによると「おもちゃでの遊び方がほかの2匹と違うかなぁという程度で、誰よりも活動的に駆け回る」とのことである。

ご飯を残さず食べて成長し、今は5.8キロの風太

「1匹で留守番させるのはかわいそう」と動物が苦手だった夫も猫の気持ちに寄り添うようになり、千太郎の相棒として迎えたのが次男の風太(オス、5歳)である。キジ白で、鼻の周りに茶色の柄がある。ソプラノボイスの甘えん坊だ。

 シェルターの中から千太郎と相性が良さそうな猫を選んでもらい、家に連れて来てお見合いをした。すると伊東さんの夫のひざに駆け上り「抱っこして」とアピール。当時、NHK朝の連続テレビ小説『わろてんか』で濱田岳さんが演じていたヒロインの兄の役名から「風太」と名付けられた。

カメラが苦手な風太(伊東さん提供)

 風太は生後2カ月、公園のえさ場に突然現れ、保護された。猫風邪で鼻はグズグズ、目やにで目が塞がり、伊東家に迎えられたころは毛がゴワゴワ・パサパサで、弱々しく小柄だった。「ご飯をいっぱい食べてほしい」と食事の世話をしたところ、残さず食べるようになって丸々と成長し、5.8キロになった。

「風太は不器用だけど一途です。目立たない所からジッと私を見つめていることも。来客は苦手ですが、時間が経つとおなかはすくので、へっぴり腰で出てきます。1匹で留守番できず、置いていかれた時は寂しがって吐いたことがありました」

 伊東家の猫のリーダーは、マイペースでジャイアン気質な長男・千太郎だが、次男・風太も自分がボスだと思っているため、パトロールを欠かさない。千太郎はトイレで大便をしても隠さないので、風太が砂をかけてあげているそうだ。

兄たちは「ひまわり」をペロペロ

 兄弟に女の子が加わったのは、千太郎と風太を連れて動物病院へ行ったら「妹は要りませんか?」と言われたからだった。2匹をもらって10カ月後、生後2カ月の麦わらの子猫を受け入れ、「ひまわり」(メス、4歳)と名付けた。この猫を保護した女性は、大通りでひかれそうになっていた子猫のひまわりを拾い上げ、動物病院に届けたところ、重度の猫アレルギーで腕が腫れてしまい引き取ることができなかったそうだ。

伊東家に来たばかりのころのひまわり(伊東さん提供)

「力強く真っ直ぐ育って、明るい花を咲かせてほしいと願って名付けました。兄たちからのペロペロあいさつのお返しをせずにいきなり相手の頭をたたくので、千太郎に叱られて追いかけ回されています。おおらかな風太は気にせず妹を甘やかします。私を大きな猫と思っているのか、同じものを食べたがります」

 すくすくと成長していたひまわりに2022年6月、大事件が起こった。首輪が口に引っかかり、外そうとしても絡まって大パニックになり、血まみれで走りまわった。バスタオルで包んで捕まえ、首輪をはさみで切って動物病院へ連れて行った。検査の結果、大事にはいたらなかったが、兄2匹も心配そうにしていた。伊東さんは以前マンションの7階に住んでいたが、2022年4月に一戸建ての実家へ引っ越してきた。猫の脱走が心配でマイクロチップと首輪をすることにしたそう。今ではひまわりを含め、3匹とも首輪に慣れている。

左から千太郎、風太、ひまわり(伊東さん提供)

茶太郎は先住猫3匹と距離を縮めている途中

 3兄妹に外猫の茶太郎が加わったのは2023年の8月27日だった。やぶ蚊に刺されたところをかきむしり、かさぶただらけになっていた。以前から後ろ右脚の爪が割れていて痛そうにする姿も気になっていた。ほかの外猫とけんかをして抜け毛も多く、伊東さんは「歳を取って病気になったり、けがをしたりするのは可愛そう」と思った。

 おやつをねだってきたタイミングで抱っこをして捕獲。茶太郎はびっくりして過呼吸になり、よだれを流していたが、そのまま動物病院へ持ち込んだ。ウイルス検査は陰性で、すぐに家猫になることができた。しばらくケージに入れて様子をうかがっていると、千太郎、風太、ひまわりが茶太郎に会いに来きて、ドアの前で見ていた。

 茶太郎は外猫時代には近所の人気者で、おやつをあげにやってくる子どもなどのファンがいた。外を闊歩(かっぽ)して生きてきただけあって、縄張りを死守して生きるワイルドな生き方が身に付いている。現在、茶太郎は保護部屋で暮らしており、伊東さんは少しずつ茶太郎の縄張りを広げながら、ほかの猫との距離を縮められるよう促している。

 茶太郎は保護部屋から脱走したり、ひまわりにやんちゃをしたりもするが、三男としての新たな生活は気に入っているようだ。保護部屋から脱走すると茶太郎の足取りを追うのは千太郎である。見張り役を買って出るなど長男としての威厳を保っている。茶太郎は地域のアイドルだが、我が家のセンターは紅一点の末娘「ひまわり」。家族の真ん中でマイペースに振る舞い、皆を和ませている。

伊東家で安心して眠る茶太郎(伊東さん提供)

若林朋子
1971年富山市生まれ、同市在住。93年北陸に拠点を置く新聞社へ入社、90年代はスポーツ、2000年代以降は教育・医療を担当、12年退社。現在はフリーランスの記者として雑誌・書籍・広報誌、ネット媒体の「telling,」「AERA dot.」「Yahoo!個人」などに執筆。「猫の不妊手術推進の会」(富山市)から受託した保護猫3匹(とら、さくら、くま)と暮らす。

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