保護団体27団体(35名)が参加。メディアの方もお招きし、アニドネスタッフも加わり総勢47名での開催
保護団体27団体(35名)が参加。メディアの方もお招きし、アニドネスタッフも加わり総勢47名での開催

シェルターメディスンとは? アニドネ「いぬねこ保護団体ミーティング 2024」

公益社団法人アニマル・ドネーション」(アニドネ)代表理事の西平衣里です。アニドネは現場でがんばる団体さんへの寄付支援がメインですが、それと同じくらい大切な支援が「情報支援」だと考えています。

 今回ご紹介するのは4月19日に実施した第4回目「いぬねこ保護団体ミーティング 2024」。ぜひ保護活動のリアルを知ってください。

(末尾に写真特集があります)

シェルターワークを学べる場があることで団体さんのがんばりを応援!

 今回は「シェルターワーク&シェルターメディスン」をテーマにミーティングを組み立てました。目的は「現場で多くの命と向き合う保護団体のリアルな声を集め、正しい現状認識と今後の課題を明らかにすること」、そして「専門家による最新事例紹介などを通して、保護シェルターの環境や運営改善に向けた知見を深めること」の2点です。

 実は、日本は保護活動を開始する際、資格や届け出は必要ありません。ですが、行っていることは大事な犬猫の命を救い(保護)、幸せに生きる場所を探す(譲渡)というとても難易度の高い活動。その活動の質を上げていくことは幸せな犬猫&人を増やすことに他なりません。

 今回も事前にアンケートを行い、団体さんの現状を把握しました。

多くの匹数を管理するシェルターでは個体管理が重要。そのやり方をヒアリング

感染症対策は最も重要。保護した犬猫をどのようなメディカル観点でチェックするのか

活動の中で最も重点を置くべき課題は譲渡数を増やすこと。早く新しい家を見つけることが最重要項目

複数の動物を管理するうえで欠かせないシェルターメディスン

 筆者がアニドネを立ち上げて1年が経った2012年に、アメリカから一時帰国した田中亜紀先生に取材をさせてもらいました。動物保護施設(シェルター)における獣医療(メディスン)のことを指す「シェルターメディスン」という考えがあることに衝撃を受け、いつかアニドネの団体さんへレクチャーをしていただきたい、とずっと思っていました。今回快く保護団体ミーティングの主旨にご賛同くださり、貴重な話をお聞かせいただきました。

 ◆「動物福祉」は科学である。「動物がいかに生きているか」を客観的に見ること
   ◆群管理のなかで「ストレス」は動物が病気になる大きな要因である。いかにストレスを減らすか
 ◆シェルターメディスンに精通した獣医師に診てもらうこと

日本獣医生命科学大学特任教授で、日本シェルターメディスン学会会長の田中亜紀先生

 この記事を読んでいただいている方は「保護活動」というと、皆同じ活動をしているイメージを持つかもしれませんが、各団体の活動するエリア(都心と地方では犬猫の状態も違う)や保護する場所(行政、個人、ブリーダー、野良)によって、活動のやり方(シェルターなのか、個人宅での預かりなのか)は異なります。

 その活動の工程で、一番重要なのが「獣医療」です。何かしらの疾患がある犬猫を保護し、集団生活を余儀なくされるシェルターで病気が蔓延しないように管理し、そしてその個体にベストマッチした飼い主さんを見つけて保護犬猫たちを笑顔にする。日本でシェルターメディスンの獣医療が当たり前になるには少し時間を要しますが、田中先生へ活発に質問をする参加団体さんの熱意は高く、私が考えるより早く浸透するのでは?と、とても期待が持てました。

人も動物も子供も孤立しない地域を作るキドックスさんの挑戦

 前文では、日本では保護活動を開始するための資格はいらない、参入障壁は低いというニュアンスで書きました。その一方で、問題に対してオリジナルな挑戦をする保護団体さんも多くあります。アニドネは先駆性があり成長性がある団体を応援しています。

 今回、保護活動をする団体さんが27団体も参加してくれました。せっかくの機会なので、自分たちの活動紹介や対談コーナーを設け、茨城県で活動する認定特定非営利活動法人キドックス代表・上山琴美さんに、キドックスの挑戦を語ってもらいました。

保護犬のお世話を、引きこもりなど生きづらさを感じている若者たちにしてもらうことによって、社会へ踏み出す一歩を後押しする活動をしているキドックス

 おそらく、保護団体さんは他の団体さんの目指す世界や活動の詳細をじっくり聞く機会はそうないと思います。アニドネはありがたいことに、各団体さんとコミュニケーションをマメにしているので、団体さんの工夫や成果を知ることができます。動物福祉情報のハブとなり、有益な情報を提供できるのは中間支援組織ならではと考え、ミーティングには必ず団体さん同士のコミュニケーションを取り入れています。

がんばる団体さんのために何ができるのか、アニドネの試行錯誤は続く

 今回、参加した団体さんからは、「新たな気づきを得た」、「実際の活動を聞けて刺激を受けた」、「ためになる会に感謝」と、運営スタッフ一同、やってよかった!と思える感想をいただきました。2時間の予定が3時間近くになってしまったというタイムマネジメントは多いに反省しつつ、今回を超えるコンテンツや工夫で、より一層団体さんが本当に必要とする情報提供をすること、それが引いては団体さんの活動レベルや活動域への拡大となり、幸せな犬猫が増え、世界トップレベルの動物福祉国家への道が開けると信じて活動を続けていきます。

 なお、5月末まで新たに支援を受けられる認定団体の公募エントリーを受け付けています。ぜひ、一緒に日本の動物福祉を変えていきませんか? 詳細はこちらからご覧ください

(次回は6月5日公開予定です)

【前の回】ただそこにいるだけで大きな力に 病気と闘う子どもたちを支え笑顔に変える犬たち

西平衣里
(株)リクルートの結婚情報誌「ゼクシィ」の創刊メンバー、クリエイティブディレクターとして携わる。14年の勤務後、ヘアサロン経営を経て、アニマル・ドネーションを設立。寄付サイト運営を自身の生きた証としての社会貢献と位置づけ、日本が動物にとって真に優しい国になるよう活動中。「犬と」ワタシの生活がもっと楽しくなるセレクトショップ「INUTO」プロデユーサー。アニマル・ドネーション:http://www.animaldonation.org。INUTO:http://inuto.jp

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この連載について
犬や猫のために出来ること
動物福祉の団体を支援する寄付サイト「アニマル・ドネーション」の代表・西平衣里さんが、犬や猫の保護活動について紹介します。
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