ぴったり寄り添いひたすら待つ 偏食の元保護犬「福」も誘惑に勝てない食べ物とは!?

天然生活
先日、とーさんが発行人を務める雑誌『天然生活』で福とそのお友達の顔をかたどったクッキーを作って販売しました。大好評!!

 月刊誌『天然生活』『ESSE』で編集長をつとめ、数多くのヒット作をつくり続けている編集者の小林孝延さんこと「とーさん」は、困り顔の元保護犬「福」と元野良猫の「とも」「もえ」と暮らしています。

(末尾に写真特集があります)

食に対してセレクティブ

 みなさんのおうちのわんこたちの大好物はなんでしょうか?

 なかなか言うことを聞いてくれないわんこでも、大好きなおやつを目の前にすればおいしい誘惑に勝つことはできず、こちらの思惑通りコントロールできる、あるいはできるように徐々になっていくものです。ところがわが家の元保護犬福は、これまでも何度も書いているように超がつくほどのびびり。ちょっとやそっとのおいしいものでは釣ることはできません。

 例えば、お客様が家にいらしたとき、福ちゃんに会いたいとせっかく言ってくださっているのに、まったく表に出てきてくれません。大好きなお肉をエサに、「ほらおいでおいで」とやっても、こんなときは口をつけることすらないのです。

 でも、そんな福にも弱点があるのです(にやり)

何を差し置いても好きな食べ物

 それはパン。パンなのです。小麦が原料のパンは犬の健康によくないことはよく知られていますから、パンを気安く与えることは慎まなければなりません。しかし、それでも福はパンが大好きなのです。

 とーさんが朝トーストを食べている時、ぴったりとそばに寄り添ってパンくずが落ちてくるのをひたすら待つのであります。「この人はいい歳をして、食べ物をすぐにポロリする」ってことをちゃんと心得ているのだからかしこいよね。そして案の定ポロポロと落ちるパンくずを福はせっせと掃除するのでありました。

おこぼれ待ちの犬
バタートーストと福

 しかし、なんで福はこんなにパンが好きなのだろう?お友達の家の黒ラブくんなんて、食べられそうなものなら肉でも野菜でもなんなら革靴でもベルトでもなんだってむしゃむしゃ食べてしまうのに、福はなかなかにセレクティブ。いつもと違う食べ物には口もつけない。それでも、パンだけは別。パンの魅力には勝てないのです。

 そこでとーさんはこんな仮説を立ててみました。

パン好きのDNAが受け継がれている!?

 福が生まれたのは中国地方のとある公園です。福の先祖たちは人目を逃れるようにひっそりとその公園の森の中で暮らしていました。野犬たちはいつもおなかを空かせながら、人が少ない早朝や夜になると歩き回って、おいしそうなものはないかなあとくんくんと鼻をきかせて辺りをうろついていました。

 そんな野犬たちの様子を見ていたのが、おいしいサンドイッチが人気の近所のパン屋のおじさんでした。おじさんはアバラを浮かせて目をギロつかせる犬たちを見て「かわいそうにおなかが空いているだろう」と、サンドイッチをつくったときにカットしたパンの耳を差し入れてくれました。

 でも、犬たちは「気をつけろ、もしかしたら毒が入っているかもしれないぞ!」と最初はなかなか口をつけませんでした。でもおじさんは、次の日も、その次の日も、おいしい焼きたてのパンの耳を持って公園にやってきました。警戒心をなかなかとかなかった野犬たちでしたが、そのうちの1匹が空腹に負けてパンの耳をひと口食べてしまいました。

手づくりパン
霧島に暮らす友達が自分でつくった小麦を送ってくれた。それを使って娘が焼いたパン

 するとどうでしょう。犬はそのおいしさにびっくり!たちまちみんなが集まってきてパンのとりこになりました。それからというもの、犬たちはやさしいパン屋のおじさんが公園に来るのはいつだろうと首を長くして待つようになったのです。人間って案外怖くないかもしれないぞと、心も開くようになりました。そんなパンで生き延びてきたDNAが福の体にはしっかりと受け継がれ(なにかあるとすぐにDNAの仕業にして納得するとーさんです)、今もパンの甘い香りには抗うことができないのです。

 というのは全くの空想の話なのですが、きっと福のパン好きの裏にはこんな物語が潜んでいるのではないのかなあと、娘がつくったチョコレートパンをかじりながら福を観察し続けるとーさんなのでした。

(次回は4月15日公開予定です)

【前の回】からっぽのケージにぽっかりあいた心の穴 庭で保護した親子猫、旅立ちの日

小林 孝延
福井県出身。編集者。月刊誌『天然生活』創刊編集長、『ESSE』編集長などを歴任。2023年10月に著書『妻が余命宣告されたとき、僕は保護犬を飼うことにした』(鳴風舎)を刊行

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この連載について
とーさんの保護犬日記
困り顔の元保護犬「福」の「とーさん」になった編集者の小林孝延さんが、いとおしくも前途多難な保護犬ライフを語ります。
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