念願の猫との暮らし、小さな子猫はツンデレお姫様に成長 一緒に長生きしようと誓った

 猫と暮らすのが夢だった京子さんは、5年前に動物病院から迎えたキジ白のニカ(ミックス、雌5歳)を、我が子のように大切に育てている。

(末尾に写真特集があります)

小さく頼りない子猫

 京子さんは、猫と暮らすのが子供の頃からの夢だった。夢をかなえるチャンスがやってきたのは、夫の海外赴任が終わり、息子が独り立ちして子育てが終了した5年ほど前のこと。

 きっかけは、京子さんが猫と暮らしたがっていることを知る知人から、動物病院で子猫の引き取り先を探していると教えられたこと。これまで動物と暮らしたことがない京子さんは、保護猫についてもよく知らなかった。そこでまず、浮足立つ気持ちを抑えて、保護猫についての勉強から始めた。

眠っている猫
神経質な性格のニカだが、家族には心を許している(京子さん提供)

 保護猫が存在する背景を調べるにつれ、飼い主が金銭的な事情で猫を手放すことがあると知った京子さんは、次に、猫がかかりやすい病気や治療費、最後を看取るまでに必要な飼育費用を調べ、自分のパート代でまかなえるかを算出した。

 さらに、猫の寿命を調べ、自分の年齢で最後まで面倒を見られるかもよくよく検討した。熟考を重ねた上、決意した京子さんはようやく、動物病院に連絡を入れた。

 対面の日、病院から迎えた生後1カ月の子猫は、あまりに小さく頼りなくて、抱き上げると京子さんの洋服にそそうをした。

「なんでこんなに小さいの!守ってあげなくちゃ……」

 この子を絶対の責任を持って飼う。京子さんの胸には、あっというまに子猫への母性が芽生えた。

心配で眠れない“育児”

 子猫は女の子で、ニカと名付けられた。慣れない場所に来たニカは、最初のうちは家具の隙間に逃げ込んだが、数時間もすると出てきて京子さんのひざに乗って眠った。ニカはおてんばで、家中を駆け回ったり突然狩りの練習をはじめて高いところに飛び乗り、京子さんの手を焼いた。

家具の隙間にいる猫
家に来て数時間は、警戒して家具の隙間から出てこなかった(京子さん提供)

 一人っ子の息子は、はじめて家族の中で自分よりも弱い存在と対面し、最初は戸惑いを見せた。その年、海外赴任から帰国した夫には、事後報告をして驚かれた。しかし、2人とも、あっという間にニカの可愛さにデレデレになった。ニカは家族には甘えるが、常にすり寄ってくるタイプではない。そんなツンデレな態度も、男性陣を魅了したようだった。

 京子さん自身もそれまではわからなかった猫飼いの気持ちがわかるようになった。

「猫を飼っている人がよく、猫がひざに乗るとどかすことができなくてトイレも我慢する、と言うのを聞いて、『どかせば?』と思っていたんです。でも、今はその気持ちがよくわかる。ひざで気持ちよさそうに眠る顔を見ていると、体勢ひとつくずせないんです。数日で、立派な猫の下僕になりましたね(笑)」

男性と猫
ニカが子猫時代、育児を手伝った息子にも懐いている(京子さん提供)

 猫と暮らすのも、子猫の世話をするのも初めてだった京子さんは、24時間ニカのことが気がかりだった。離乳食を与え、夜も様子を見る。小さなニカに異変がないか心配で心配で眠れず、やつれた京子さんを心配した上司に呼び出されたこともあった。

「言葉が話せない分、異変があったら自分が気づかなければいけない。毎日、緊張感や責任感で張り詰めていて、まるで初めての育児でしたね」

猫の知覚過敏症

 目下の京子さんの心配事は、ニカの持病だ。

「ニカは腎臓が弱いほか、2年ほど前から興奮した時に体が波打つようなけいれんの症状が出るようになり、過度なグルーミングや突然走り回って何かから逃げるようなしぐさも目立つようになりました。ネットで色々と調べたところ、これらの症状が『知覚過敏症』という病気に当てはまることを知ったんです」

毛布にくるまる猫
大好きな毛布にくるまってご満悦のニカ(京子さん提供)

 京子さんは他の飼い主からのアドバイスを受けて、ニカがなるべく症状を出さずに過ごせるよう、家族で工夫した。

「神経質なニカにストレスがかからないように気を配って、興奮してしまったときはお気に入りの毛布で体を包んであげるようにしています。試行錯誤しながら対処して、今は少しずつ落ち着いてきましたね」

 京子さんは、ニカの健康管理に役立てるために愛玩動物飼養管理士の資格も取得した。

「今はネットでなんでも学べるじゃないですか。でも、実際やるのは違う。その子のことをしっかり見て、その子に必要な世話をしなくちゃいけないので、きちんと知識をつけることが大切だと思ったんです。学んだことはちゃんと日常に役立っているので、資格を取っておいてよかったです」

一緒に長生きしたい

 ニカは食べ物をねだる時に「ゴハン!」と鳴くという。「飼い主だからそう聞こえるんですよね(笑)」と、照れながらも、京子さんは“親バカ”の顔をのぞかせる。

 京子さんの夫も、ニカにはめっぽう甘い。

「夫はニカにはけして怒らないし、何かをしでかしても常にニカの味方。だからいいように使われているんですよ。遠くから可愛い声で夫を呼び寄せて、『なでて』と甘えたり、今から寝るから布団をかけろと言ったり。はたから見ていると、まるで執事を呼びつけているみたいなんです(笑)」

 ツンデレなお姫様の存在に、家族全員が色めき立っていると京子さんは語る。

猫
ツンデレな様子が家族を魅了する(京子さん提供)

「すでに家を出た息子は、帰ってくるときはニカにかまってばかり。夫はリモートで仕事していると、ニカに邪魔されてうれしそうにしています。夫婦間で気まずいことや嫌なことがあっても、ニカの存在が空気を変えてくれる。ニカと一緒に長生きしたいので、まずは自分たちが健康で長生きしなくては、というモチベーションも生まれました」

 京子さんの夢をかなえた小さな猫は、いまも家族の中心で笑顔を与え続けている。

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原田さつき
広告制作会社でコピーライターとして勤務したのち、フリーランスライターに。SEO記事や取材記事、コピーライティング案件など幅広く活動。動物好きの家庭で育ち、これまで2匹の犬、5匹の猫と暮らした。1児と保護猫の母。猫のための家を建てるのが夢。

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