海辺生まれのヤンチャな子猫 譲渡先で先住猫から手荒い洗礼

茶トラ猫
ぼくだって、キリリとする時あるんだよ

 海辺の波消しブロックの陰で暮らす野良猫が産んだ子猫たち。カラスに狙われそうで、保護団体に保護された。その中の1匹、茶トラの子猫は、譲渡先でも怖いもの知らずで、すぐにヤンチャぶりを発揮した。だが、先住猫の反応だけは違った。

(末尾に写真特集があります)

海辺で生まれた子猫

兵庫県芦屋市の芦屋浜。波消しブロックの陰に隠れるように野良猫たちが暮らしていた。そこで2016年の初夏、野良猫が4匹の子猫を産んだ。母猫はなかなか捕獲できず、TNRに失敗した猫だったようだ。

子猫たちがテトラポットの上にはい出るようになると、カラスが飛来し始めた。「これは危ない」と、保護団体が子猫たちを保護した。

寝転がる茶トラ猫
まったりできる午後、至福の時

4匹の子猫は、預かりボランティアのもとですくすくと育った。順に譲渡され、中の1匹だけが残っていた。

1匹より2匹

兵庫県内の山本さん宅では、あんこちゃんというメスの保護猫を引き取って飼っていた。一人っ子のように育つのも悪くはないが、他の猫と触れ合わないまま成長してもいいものだろうか、と山本さんは考えていた。

「人間だって兄弟がいた方がいい。猫も1匹より2匹いたほうが望ましいのでは、と思ったんです」

顔をかく猫
かいかいってしているだけなんだけど、可愛いでしょ。エヘッ!

2匹目の猫を迎えたいと思い、山本さんは譲渡サイトで子猫を探した。夫が望んでいたピンク色の鼻をした茶トラの子猫(オス)が見つかった。

性格は一言で言うなら「悪い」

2016年7月、その子猫の2週間のトライアルが始まった。生後2カ月くらい。キャリーの扉を開けると、ちょっと辺りを見回した後、我が家のように走り回った。「まるで、ここ、ぼくの家だよと言っているようでした」。子猫には、「虎太郎」と名付けた。

虎太郎は、人懐っこくて、物おじしない性格。保護団体のスタッフが帰ると、すぐに膝の上に乗って寝たという。「スタッフに、どんな性格ですかと尋ねたら、一言『悪い』とおっしゃって。笑ってしまいましたが、3歳になっても相変わらず悪いんです。ブラインドのひもは切るし、スカートやベルトも引き裂かれました。でも、不思議と爪とぎは、爪とぎでしかしないんですけど」

3日間は完全に隔離して、その後、先住猫のあんこちゃんと、ケージご越しに少しずつ対面させた。

子猫
無邪気な子猫時代

あんこちゃんは、新入りをシャーッと威嚇し、山本さんに虎太郎くんの匂いがついただけでも、シャーシャーいって怒った。仕方なく、山本さんは、虎太郎くんを触った後は着替えて、シャワーで匂いを落としてから、あんこちゃんの世話をした。ひと夏は、あんこちゃんと山本さんは2階の寝室で、虎太郎くんと夫は1階で眠ったという。

ただし、あんこちゃんは夫に虎太郎くんの匂いがついても、不思議と怒らなかったという。

いまでも、あんこちゃんと虎太郎くんは、人ひとり分くらいの空間をあけて暮らしている。虎太郎くんはあんこちゃんに遊んでほしいようだが、なんとなく近寄りがたい空気なのだ。それでも2、3カ月に一度はチューをするのだという。

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渡辺陽
大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。朝日新聞社sippo、telling、文春オンライン、サライ.jp、神戸新聞デイリースポーツなどで執筆。FB:https://www.facebook.com/writer.youwatanabe

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この連載について
幸せになった保護犬、保護猫
愛護団体などに保護された飼い主のいない犬や猫たち。出会いに恵まれ、今では幸せに暮らす元保護犬や元保護猫を取材しました。
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