猫とトラ、ほとんど同じ!? 絶滅の危機からトラ救いたい!

 鋭い眼光。印象的な縞模様。大型猫科動物の中でも、ライオンと並んでよく知られているのがトラだ。生息圏はアジア北東部から南部まで広く分布。十二支のひとつにも数えられるなど、日本でも猛獣としてなじみが深い。そんなトラが絶滅の危機に瀕している。猫の大先輩・トラに、いま何が?

トラも段ボールに入る?

 身近なペットとして、家族の一員として、犬や猫を可愛がる人はたくさんいる。だが、トラとなると……さすがに身近だとはいいがたい。

 だが、動物学者の今泉忠明先生は「トラと猫は、ほとんど同じですよ」という。

「顔を洗う、爪を研ぐ、木に登る、箱に入る…野生のトラと家猫の行動をそのまま比較することはもちろんできませんが、習性はほぼ同じです」

 そもそも野生のトラは、保護区の管理者や研究者でさえ、なかなか姿を見ることはできないほど希少であり、また、慎重なのだという。でも、動物園のトラでも、トラはトラ。そこでじっくり観察するとわかるらしい。

猫とトラ、幼い頃の方がより似ている。トラは鼻が大きくて、耳が丸い。
猫とトラ、幼い頃の方がより似ている。トラは鼻が大きくて、耳が丸い。

 もし、トラに巨大な段ボール箱を与えたら?

「安全だと確認できたら、入るでしょうね」

 やっぱり!トラも猫も、狭くて身を潜められる場所が大好き。野生ならば洞穴や木の洞なのだろうが、箱はそれと同じなのだというのだ。

「むしろ違うところを探した方がいいでしょうね」

 トラと猫の違いは?先生は大きくいえば2つ、と教えてくれた。

(1)トラは吠える/猫は吠えない

 いわゆる「ガオーッ」という吠え方のことではなく、のどの奥で「ウォッ、ウォッ」と大きな唸り声を出すこと。

「そうしょっちゅう吠えるわけではありません。だいたい、朝と夕方ですね。そのタイミングで、動物園で観察してみてください」

 なぜ吠えるのか、といえば、「縄張りを主張するため」。オスもメスも吠えるそうで、自分のエリアを主張することで無用な衝突を避け、また、敵を寄せ付けず、発情期のメスはオスを呼ぶことにもなるという。

「ではなぜ、猫は吠えないの?というと、そもそも舌骨の形状が違うんですよ。トラやライオンのように唸るような吠え方は、猫には難しいんです」

(2)猫は香箱/トラはスフィンクス

 猫の可愛い仕草のひとつに「香箱座り」がある。両前足を胸の下に折りたたんで、まるで卵を抱いた雌鶏のようにこんもり、ふっくらと座る姿だが「野生の猫科は、ヤマネコ以外はほとんどやりません」。

 なぜ香箱座りをしないのか、明確な理由はわかっていないが、「おそらく、いざというときすぐに動けないから」だと先生は指摘する。

「大体、大型猫科動物が落ち着いて座るときの姿は、スフィンクスのように両足を前に出して、腰を上げればすぐに走り出せる体勢です」

 同じ理由で、いわゆる「ごめん寝」もしないのだとか。

香箱座りは猫がとてもリラックスしている証拠
香箱座りは猫がとてもリラックスしている証拠

「虎の子」はやっぱり大切!

 「虎の子の〇〇」や「虎穴に入らずんば虎子を得ず」など、トラにまつわる慣用句や言い回しは多い。それだけ日本人にとってトラは、ある意味身近な存在だ。

 実際、トラの子はとても愛らしい。

 母トラは一度の出産で2~4頭の子を産み、2~2歳半で独立するまで大切に育てることで知られている。ニュースなどでも、「〇〇動物園ではトラの赤ちゃんが誕生、来場者にお披露目されました」などの情報が流れてくるが、実は野生のトラは絶滅の危機に瀕しているのだという。

 野生のトラの置かれている状況について、トラの保護に取り組むWWF(World Wide Fund for Nature 世界自然保護基金)に聞いてみた。

子育てはメスのみで行うので、狩りや食べ方は母親から学ぶ
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10万頭からわずか3000頭に減少!

 20世紀の前半までは、主にハンティングによって、トラは減ってしまった。20世紀後半になると、先進国の経済成長にともない、生息地の開発によってトラは住処を失っていった。

「森林伐採や草地の開発が進んだことに加え、トラの骨などは高価な薬の原料になるため、密猟も後を絶たないのです」(WWF担当者)

 今もなお、これらの「生息地の減少」と「密猟」の問題は解決されていない。

トラのすみかとなる森が急速に減少。スマトラ島の森は、1985年を100%とした時、2016年には半分以下になっている。 ©WWF Indonesia
トラのすみかとなる森が急速に減少。スマトラ島の森は、1985年を100%とした時、2016年には半分以下になっている。 ©WWF Indonesia

 現在、野生のトラが確認されているインドネシアやインドシナ半島では、保護区内の国立公園であっても、違法に農園が開発されている。

「そうした農園で栽培されるのは、パーム油の原料となるアブラヤシや天然ゴム。あるいは紙パルプの原料なども。それらが日本や欧米に輸出されている可能性もあります」

 もちろん、現地ではそうした違法な開発や密猟ハンターを阻止するためにパトロール、法律の整備、公園管理の徹底などが進められているが、とても手が回り切っていないのが現状だ。事実、そうした経済活動によって生活している人々もいるし、野生のトラに家畜や家族が脅かされている人だっている。野生動物と人間の共存は、決して簡単な問題ではないのだ。

トラを助けるためにできること

 私たち、日本に住む動物好き、ペットオーナーには何ができるだろう。普段の暮らしの中で使っているもの、食べているもの、消費しているものは、どこで、どのように生み出されているのか。これを知り、環境に配慮した製品を買うことは大切な一歩だ。

 WWFに寄付するという方法もある。WWFは世界100か国で活動している、環境保全団体。パンダのマークを知っている人もいるだろう。地球上にはトラだけでなく、保護を必要としている野生動物が山ほどいる。少しでも彼らの命を、生息地域を守るために、 WWFでは、調査、報告、啓もう、保護活動を粘り強く続けている。

 例えば、WWFに月500円の支援を1年半継続すると、ロシアのリハビリセンターで傷ついたトラを保護する1日分の費用が捻出できる。また、月1000円の支援を1年間継続すると、スマトラ島でトラを密猟から守るパトロールを、今より2日、多くすることができる。(詳細はWWFのトラ特設ページ) 

 地球上で起こっている環境破壊。トラを始めとする野生動物が、人間の豊かな生活の影で悲鳴を上げている。不幸な保護猫、保護犬を思いやるのと同じ気持ちで、少しだけ、この美しい大型猫科動物のことを、考えてみたい。

浅野裕見子
フリーライター・編集者。大手情報出版社から専門雑誌副編集長などを経て、フリーランスに。インタビュー記事やノンフィクションを得意とする。子供のころからの大の猫好き。現在は保護猫ばかり6匹とヒト科の夫と暮らしている。AERAや週刊朝日、NyAERAなどに執筆中。

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