山の中で育った2匹の「山犬」 少しずつ家族にとけ込んでいく

 兵庫県北部ののどかな山の中、40匹以上の野犬の群れがいた。苦情が寄せられ、保健所が捕獲に乗り出すことになった。その情報を知った保護団体ARK(大阪府)によって野犬たちは保護された。山中で生まれ育ったためARKでは「山犬」と呼ばれていた。白いイクシオン、黒いアヌーシュカもその一員だった。

(末尾に写真特集があります)

満面の笑みのイクシオン
満面の笑みのイクシオン

「私が守ってあげないと」

 山犬たちは急いでARKに連れてこられ、数匹ずつ同じ犬舎に入れられた。イクシオンくんは、他の山犬2匹と同じ犬舎に入ったが、その犬たちと喧嘩になり、大けがをしてしまい、手術を受けたという。

  一方、アヌーシュカちゃんはARKを脱走してしまうほどのヤンチャ。野生として育った犬はいったん脱走すると捕まえるのも大変だが、当時、ARK職員だった橋本さんにだけは近づいてきたそうだ。

 橋本さんは、イクシオンくんとアヌーシュカちゃんの世話をして性格と体質を把握するうちに「私が守ってあげないといけない!」と思ったという。

思いっきり遊んでご機嫌なアヌーシュカ
思いっきり遊んでご機嫌なアヌーシュカ

引き取られて体調も改善

 当時独身だった橋本さんが、いまの夫と結婚する条件のひとつが2匹と一緒に暮らすことだった。橋本さんの動物愛護にかける思いを十分知っていた夫は、その思いを受け入れ、イクシオンくんとアヌーシュカちゃんも一緒に暮らすことになったという。

 家に迎え入れてから、イクシオンくんは3日間、アヌーシュカちゃんは4日間オシッコができなかった。山とARKしか知らない2匹にとって、家の中にあるもの全てが初めて見るものなので無理もなかった。

「シェルターには、環境がストレスになって体調を崩す犬が結構いますが、里親のところに行くと治る子が多いんです」。イクシオンくんもシェルターにいた頃は血尿をしていたのだが、それも治まったという。

繊細なままの2匹

 ただ、2匹ともご主人には1年ほど懐かなかったという。

 いまでも2匹は、知らない人が来るとケージの奥にこもってしまい、屋外に出ると怖がるので、散歩もままならない。時折ARKが保有する兵庫県篠山市のドッグランまで連れて行き、思いっきり遊ばせるそうだ。

「どんなふうに接したら心を開いてくれるのか考えました。なかなかうまくいかないのですが、大変なほど、喜びも大きいですね。いつしか、嬉しいことがあるとクルクル回って喜びを表現してくれるようになりました」

 じっくり向き合わないとなかなか難しい繊細な2匹だが、家族とは強い絆で結ばれている。

<イクシオン、アヌーシュカの出身団体>
アニマル・レフュージ関西(ARK)
さまざまな理由で保護した犬や猫の心身のケア、社会化トレーニング、里親探しなどを行っています。
住所:〒563-0131 大阪府豊能郡能勢町野間大原595 アニマルレフュージ関西
HP:http://www.arkbark.net/
営業時間:10:00~16:00
Tel:072-737-0712/Fax:072-737-1886
E-mail: ark@arkbark.net
渡辺陽
大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。朝日新聞社sippo、telling、文春オンライン、サライ.jp、神戸新聞デイリースポーツなどで執筆。FB:https://www.facebook.com/writer.youwatanabe

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この連載について
幸せになった保護犬、保護猫
愛護団体などに保護された飼い主のいない犬や猫たち。出会いに恵まれ、今では幸せに暮らす元保護犬や元保護猫を取材しました。
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